Z世代に見られる極端な消費行動は、旧来のマーケティング手法では捉えきれない新しい価値観を映し出しています。彼らはなぜ、特定の分野に惜しみなくお金を使い、他の分野では徹底して切り詰めるのでしょうか。本稿では、牛窪恵氏の著書『Z世代の頭の中』(日本経済新聞出版)より、Z世代消費心理と行動原理について、詳しく解説します。
サウナに年間100万円、家には食器ゼロ…理解不能な「Z世代」の金銭感覚。一見“矛盾”した消費行動に隠された、彼らなりの“超合理的”な計算 (※写真はイメージです/PIXTA)

ゲームに課金、メンズエステ・脱毛に40万円も…普段は10円単位の節約に余念なし

コンサルティング会社に勤めるハルキさん(25)は、冒険系のロールプレイングゲーム「原神」(COGNOSPHERE)にハマっていると教えてくれました。

 

彼いわく、原神は自由度や画面のクオリティが高く、ストーリーも秀逸で、面識がない海外の若者とも協力しながらプレーできる。チャットで会話しながら共に旅することで、「お互いの考えとか性格とかビンビン伝わってきて、もう『脳汁』が止まらないんです」。

 

土日など休日は、4、5時間熱中してしまうそうですが、仕事や日常を忘れて自分を取り戻す大切な時間なので、「自分にとって『必要悪』」だとハルキさん。

 

プレーは基本的に無料ですが、一定レベルを超えると課金を通じてゲーム内通貨を入手する必要があるといい、先日も「また1万円以上、つい課金しちゃった」と言います。

 

ゲーム以外で最近、合わせて40万円超と予定外の出費をしたのは、「メンズエステ」と「脱毛」です。前者は、「肌のケアは若いうちから」と考えていたところ、友人に薦められて行ってハマった。他方の後者は、ある日、ネット上の広告を見て「ヒゲ脱毛」に通い始めたところ、手足の毛の濃さも気になり始め、「全身、永久(脱毛)を目指そうってなった」とのこと。現在、有給休暇を取って2か月に1回ペースで通っており、「ここまできたら、やめられない。完璧を目指したい」と言います。

 

もっとも、普段は10円単位の節約に余念がないハルキさん。買い物分の電子記録やレシート画像は毎回、家計簿アプリに読み込ませ、カレンダーアプリと同期させて「この日にいくら使った」と管理しているそう。また、分野別に業務用スーパーと一般的なスーパーを使い分けたり、「ポイント10倍セール」などの日を見計らってポイントを貯めたりと、昭和でいう「賢い主婦」さながらの行動も続けています。

 

最近は自炊も始めました。まだ料理のバリエーションが少ないため、冷蔵庫に眠る食材をChatGPTに教えながら、「卵を使ったレシピは?」などと質問。その提案をヒントに、少しずつ得意メニューを増やしているそうです。