タワーマンション(以下タワマン)やレクサスというと、“お金持ちの象徴”のイメージです。しかし、それらのオーナー全員が経済的に余裕があるかというと、もちろんそうではありません。今回紹介する50代の滝本夫妻は、“家計は火の車”ながらタワマンに住み、レクサスに乗っています。一見すると無謀にも思えますが、夫婦にはある思惑がありました――。詳しくみていきましょう。辻本剛士CFPが解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
万年金欠です…世帯年収1,200万円の50代夫婦「自宅はタワマン」「車は“残クレクサス”」で家計は火の車も、実は「賢い選択かもしれない」といえるワケ【CFPの助言】
夫婦の戦略に、FPは太鼓判
夫婦は先述のように、定年後にはタワマンを売却、レクサスを返却し、地方で戸建てを購入する計画を立てています。FPは、そんな2人の戦略に太鼓判を押し、「安心して老後を迎えるためには、定年を区切りに生活水準を整理し、現役時代の支出感覚を引きずらないようにすることが大切」だと助言しました。
もっとも、滝本夫妻の場合はきちんと整理をすれば、老後についても大きな問題はなさそうです。
仮に、タワマンを購入時と同じ9,000万円で売却できれば手元に約5,000万円が残り、その後2,000万円で中古住宅を購入しても、なお3,000万円程度の資金が確保できます。加えて、定年退職金も支給される見込みですから、老後破産の心配はなさそうです。
タワマン、レクサス、ありがとう…滝本夫妻のその後
後日、定年を目前に控えた滝本さん夫婦は、計画どおり長年暮らしてきたタワマンと、残クレで乗り継いできたレクサスを手放すことにしました。
驚くことに、購入時9,000万円だったタワマンは1億円を超える価格で買い手がつきました。売却によりまとまった資金を手にしたことで、夫婦は次の生活への準備を整えることができました。
振り返れば、タワマンでの暮らしもレクサスでの時間も、決して無駄ではなかったと滝本さんはいいます。
「むしろ、通常ではなかなか体験できない景色や日常を楽しむことができたことは、なにものにも代えがたい思い出になりました。たしかに家計は厳しい時期もあったけれど、あのときの選択に後悔はありません」
そう語る滝本さんの表情は晴れやかで、次のステージに進む覚悟を感じさせるものでした。
辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表/CFP