世帯年収1,200万円でも“万年金欠”の50代夫婦

「定年を迎えたあとの生活について、自分たちの計画を実現するためにアドバイスが欲しいんです」

滝本博さん(仮名・57歳)は、妻とともに相談に来たFP事務所で、こう話しました。

世帯年収は1,200万円と、比較的高収入の滝本夫婦。現在2人が暮らしているのは、港町を一望できるタワマンです。玄関を開けると、白を基調とした広々としたリビングが広がり、一面ガラス張りの大きな窓からは、都心の夜景が目に飛び込んできます。

さらに、専用区画の地下駐車場には、艶やかな黒色のレクサスが停まっています。一見すると、誰もが羨むような暮らしぶりです。

しかし、夫婦は笑いながらこう口にしました。

「言いにくいんですが、実は万年金欠で……」

9,000万円のタワマンは、それまで貯めてきた貯金の大半を頭金に充てて購入したもの。現在も4,000万円の住宅ローンが残っており、毎月の返済に加え、高額な管理費や修繕積立金がのしかかります。また、自家用車のレクサスは「残価設定ローン(通称:残クレ)」で購入。月々の支払額は抑えられているものの、住宅ローンも相まって手元に残るお金は少ない状況です。

高額なタワマン購入、残クレ利用……いくら世帯年収1,200万円とはいえ、こうした選択は家計の安定を揺るがしかねません。

元々は「堅実派」だった滝本夫妻

とはいえ、滝本夫婦は、もともと浪費家だったわけではありません。むしろ“堅実派”な2人は、計画的に貯金を続けてきた結果、貯蓄額は5,000万円にものぼります。

では、いったいなぜそんな夫婦が“万年金欠”の生活となってしまったのでしょうか。