厚生労働省の調査によると、2003年以降、離婚件数自体は減少傾向にあります。一方、データを詳しくみていくと、同居20年以上の「熟年離婚」が増加しているようです。その原因はいったいなんなのか、現在日本で増えている「熟年離婚」の実態と注意点を、具体的な事例をもとにみていきましょう。山﨑裕佳子CFPが解説します。
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由美子さんが離婚を決意した「息子の告白」
そんな由美子さんに決定打を与えたのは、ひとり暮らしを始めた息子のひと言でした。
「昔から父さんの押しつけにはうんざりだったよ。ようやくあの家を出られて清々した。母さんも我慢しないで、もっと自分のやりたいように生きてもいいんじゃない」
由美子さんは洋治さんにこう言います。
「あなたは『家族のため』と言いつつ、結局は自分の理想を私たちに押しつけてきただけよ。もう、疲れたの。これからは自分の人生を生きていきます」
それを聞いた洋治さんは、金槌で頭を殴られたような衝撃を受けました。しかし、すでに手遅れ。どんなに抵抗しても、由美子さんの気持ちは変わりませんでした。
「熟年離婚」が年々増加している日本
厚生労働省「離婚に関する統計の概況(令和4年度)」によると、離婚件数自体は2003年をピークに減少傾向にあります。
ところが、離婚件数を100%として同居期間別の離婚割合をみると、同居20年以上カップルの離婚割合は上昇傾向にあり、離婚件数のうち令和2年度は21.5%が熟年離婚となっています。
離婚理由はさまざまですが、ヒントとなるのが裁判所の司法統計です。年齢問わず、離婚申し立ての動機でもっとも多いのが「性格の不一致」。また、離婚の申立人は女性が男性の2倍となっています。
人生100年と考えれば、50代はその折り返し地点。子どもが独立したタイミングと重なることも多く、自分の今後の人生について改めて考えるきっかけになることも多いようです。
熟年離婚は「事前準備」が肝要
ただ、離婚を決断する前には、経済的な見通しを持つことが欠かせません。昔に比べると働いている人自体は増えているものの、50代以上の女性では結婚や出産を機に正社員を辞めてしまった人も少なくないため、経済的基盤が弱い人が多いのも現状です。
感情だけが先走った結果後悔することのないよう、「離婚しても生活が成り立つか?」「離婚後に生活に困らないだけの収入を得る見通しが立っているか?」といった、経済的なシミュレーションをきちんと行ったうえでの決断が望ましいでしょう。
山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI
代表