由美子さんが長年抱えてきた「違和感」

「あなたがこれまで、私たち家族のために尽くしてくれたことはわかっているつもりです。でも、あなたのその家族愛に疲れたの……」

洋治さんは市役所に勤める地方公務員で、年収は約800万円。由美子さんも出産後に再就職をし、正社員として働いています。このように、夫婦共働きという共通点がある一方、2人の「交友関係」は異なっていました。

洋治さんは、職場で最低限の付き合いがあるものの、長く付き合っている友人はなく交友関係は狭め。一方、由美子さんは社交的な性格で学生時代からの友人も多く、職場の仲間とも広く交友があります。

子どもが小さいころは由美子さんも「息子優先」と、友人や同僚との付き合いをできるだけ控えて家族水入らずの時間を過ごしてきました。しかし、月日が流れるとともに、夫のその“異常なまでの家族愛”に息苦しさを感じるようになっていきます。

たとえば、結婚以来続いている家族旅行。ボーナスが出るタイミングで洋治さんが計画を立て、夏は海、冬はスキーがお決まりのコースです。行き先はいつも洋治さんが決め、由美子さんや祐樹さんの意見を取り入れてくれることはほとんどありません。

過去に数回、祐樹さんの願いを叶えるために由美子さんが勇気を出して行き先のリクエストをしたこともありました。しかし、毎回決まって洋治さんが不機嫌になるため、それ以降、なにも言わないと決めています。

もちろん家族旅行には楽しい思い出もたくさんありました。しかし、息子と由美子さんの興味の矛先が変わっても、洋治さんはそれを知ろうともしません。

そんな洋治さんの傲慢さに、由美子さんは不満を募らせていきました。

また、月に1度の「外食の日」も、洋治さんが勝手に決めたもの。由美子さんや祐樹さんの予定などお構いなしに定められ、遅刻は許されません。

さらに、由美子さんが気に入っていたガーデニングスペースを「家族団らんのため」と言い、勝手にBBQ用スペースに改造するなど、「家族のため」を免罪符にした独りよがりの行動が目立ちます。

「結局、あの人は自分のやりたいようにしているだけ」

由美子さんは、洋治さんのこうした行動に辟易としていたのでした。