(※写真はイメージです/PIXTA)

開業医としてのキャリアをスタートする際には、家族の保障について考えることも重要です。とくに、子どもをお持ちの先生方にとって、教育資金に関する計画は、お子様の将来や安定した生活のために欠かせません。開業時に準備すべき保険について、子どもの教育資金に通じるメリットや注意点を具体例も交えて解説します。本連載は、コスモス薬品Webサイトからの転載記事です。

子どもにかかる教育費、その実態と対策

子どもを持つ開業医がクリニックを経営する上で、子育てに伴う教育費は大きなウエイトを占めます。

 

文部科学省の「令和3年度子供の学習費用調査」によると、幼稚園から大学卒業まですべて公立に通わせた場合の教育費は約822.5万円、すべて私立に通わせた場合は約2,307.5万円にのぼります。

 

[図表]公立と私立の学習費用の比較

 

開業医は教育に対する熱意が高い傾向にあり、とくに私立校を選択する場合や医学部進学を視野に入れる場合、その費用はさらに増加します。

 

たとえば、私立大学の医学部では、学費だけでなく寄付金や研修費も必要となり、総額で2,500万円以上かかることも珍しくありません。こうした教育費を確保するためには、早期からの資金計画が不可欠です。

 

以下、子どもの教育資金となり得る主な保険について見ていきましょう。

教育資金として運用できる変額定期保険

◆変額定期保険とは

変額定期保険は、保険と投資を組み合わせた商品で、開業医が教育資金に充てる際の有用な選択肢となります。

 

この保険の特徴は、保険料の一部を投資信託などに投資し、その運用成果に応じて将来の保険金額が変動することです。保険期間が決まっているため、教育資金が必要となる期間に合わせて活用することがポイントです。

 

期間中に運用資産をスイッチング(他の投資信託に変更)できるなど、運用面での柔軟性もあります。

 

変額定期保険のメリット

●運用がうまくいけば、保険金額が増加し、将来の教育資金をより多く確保できることが見込める

●市場の運用成績に連動するため、インフレになった場合でも資産価値の目減りを防げる

●単なる投資とは異なり、生命保険料控除を受けられる可能性もある

●運用期間中に利益が出た場合、保険金を受け取らなければ、利益に対する税金はかからない

 

変額定期保険の注意点

●運用成果が悪い場合、元本割れの可能性もあるため、リスクを十分に理解しておく必要がある

●スイッチングの回数によっては手数料がかかることもあり、利益に影響を与えない範囲での運用が求められる

●投資と保険が組み合わさっていることで仕組みが複雑であり、理解が容易でないため、安心して任せられる保険会社やFPを選ぶことが重要

 

◆運用の具体例

たとえば、月額5万円の保険料を払い込む変額定期保険を契約した場合、そのうち3万円が保障に、2万円が投資に回されるとします。

 

投資部分が株式市場に連動するファンドに投資され、年間5%のリターンを得られた場合、教育資金として受け取る金額は増加します。

 

しかし、市場が低迷してマイナスリターンとなった場合、受け取る保険金額も減少します。

 

変額定期保険は、投資リスクを取りながらも将来の保障を確保したいと考える開業医に向いています。

 

ただし、リスク許容度や投資知識を持つことが肝要です。

遺族の生活や教育の備えに「外貨建て一時払い終身保険」

◆外貨建て一時払い終身保険とは

開業医自身が亡くなったあとに、遺族が生活に困らないように資産を備えておくことは大切です。

 

外貨建て一時払い終身保険は、契約時に保険料を一括で払い込むことで、生涯にわたる保障を受けられる保険です。

 

被保険者が死亡もしくは所定の高度障害になった際、契約内容に基づいて死亡・高度障害に対する保険金が支払われます。

 

保険料を外貨(ドルやユーロなど)で運用し、為替相場の変動を活用することが特徴です。

開業医にとっては、長期的な資産形成となるもので、教育資金の備えとしても有用です。

 

外貨建て一時払い終身保険のメリット

●外貨で運用するため、為替レートが有利に動いた場合、為替差益として保険金額が増加する可能性があります。とくに、円安の時期には大きな利益を享受できる可能性がある

●一度に保険料を支払うため、毎月の支払いの手間が省け、子どもの教育費を含めた資金計画を立てやすくなる

●外貨建て保険は相続税対策としても有効です。保険金は相続財産に含まれますが、非課税枠が適用されるため、節税効果が期待できる

 

外貨建て一時払い終身保険の注意点

●為替レートの変動により、保険金額が減少するリスクがある。円高になると、円換算した保険金額が減少する

●市場の変動や為替リスクにより、元本割れする可能性がある

●大きな金額を一括で支払うため、資金に余裕がなければ、契約後のクリニックの財政や運転資金に影響を及ぼす可能性がある

 

◆運用の具体例

たとえば、開業資金の1,000万円をドル建て一時払い終身保険に投資した場合、契約時の為替レートが1ドル=156円であれば、約6万4,100ドルが運用されます。

 

運用期間中に円安が進み、為替レートが1ドル=160円に変動すれば、円換算した保険金額は約1,026万円となり、為替差益を享受できます。

 

逆に円高で1ドル=140円になった場合、保険金額は約897万円となり、元本割れのリスクがあります。

 

外貨建て一時払い終身保険は、為替リスクを取る代わりに高いリターンを期待できる商品で、長期的な資産形成を目指す開業医に適しています。

 

ただし、為替相場や国際経済の動向を常に注視することが求められます。

着実に教育資金を蓄える「学資保険」

◆学資保険とは

学資保険は、子どもの教育資金の準備を目的とした貯蓄型の保険です。

 

契約者が定期的に保険料を払い込むことで、満期時に所定の給付金が支払われる仕組みです。給付金は、子どもの入学や進学時期に合わせて受け取ることができ、教育費用の多くをカバーします。

 

開業医として安定したクリニック経営を行いつつ、子どもの教育資金を着実に蓄えていくことが可能です。

 

万が一、開業医である契約者が死亡もしくは高度障害になった場合には、保険料の払い込みが免除される特約も付いています。

 

学資保険のメリット

●保険料の定期的な払い込みによって「資金を積み立てていく」ことになるため、将来の教育資金を計画的に準備しやすくなる

●契約者の万が一に備えつつ、教育資金を準備できるという両立性が大きい

●学資保険の保険料は生命保険料控除の対象となっており、所得税や住民税の負担が軽減され、クリニック経営の利益に還元される

 

学資保険の注意点

●学資保険の利回りは、ほかの投資商品に比べて低い傾向にあり、低金利時代には利回りの魅力が薄れる可能性がある

●契約期間中に解約すると、解約返戻金が払い込んだ保険料を下回り、元本割れになる可能性があるため、途中解約には要注意

●保険料には手数料が含まれており、運用益に対してコストがかかるため、実際のリターンが減少することもある

 

◆運用の具体例

たとえば、月額2万円の学資保険を18年間払い込むとします。総払い込み保険料は432万円となりますが、満期時に500万円の給付金を受け取れる契約の場合、68万円の運用益を得ることができます。ただし、この運用益は低金利時代では他の投資商品に比べて見劣りするかもしれません。

 

学資保険は、着実に教育資金を準備したいと考える開業医の方に適しています。運用面で大きなリスクを取りたくない、保障機能を重視したいといった意向をお持ちの場合は、有効な選択肢となるでしょう。

教育資金となる保険は、長期的視点で賢く選びましょう

開業医として、家族の将来を考えるとき、子どもの教育資金は重要なテーマです。

 

変額定期保険や外貨建て一時払い終身保険、学資保険など、教育資金に通じる保険はさまざまですが、それぞれの特徴、メリット、注意点を理解した上で、家庭のニーズに合ったものを選ぶことが肝要です。

 

家族の安心と子どもの未来のために、リスクとリターンのバランスを考え、長期的な視点で資金計画を立てましょう。

 

 

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