東京商工リサーチによると、2024年に「早期・希望退職」を実施した上場企業は57社(募集人員は約1万人)でした。これは前年比3倍超と、早期・希望退職を促す企業が増えていることがわかります。そんななか、自ら進んで早期退職した会社員の水戸さん(仮名・55歳)の事例をもとに、早期リタイア後に潜む「思わぬ落とし穴」のリスクとその対策をみていきましょう。辻本剛士CFPが解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
俺より金ないくせに…退職金3,000万円に飛びつき早期退職した55歳男性「資産1億円」も心から笑えない→1年後、元同僚に「もう一度働かせてください」と頭を下げたワケ【CFPの助言】
前年比3.2倍…増加する「早期退職」「希望退職」募集
近年、上場企業における「早期退職者」が増加傾向にあるようです。
東京商工リサーチの発表によると、2024年に実施された上場企業の早期・希望退職募集は前年比3.2倍となり、1万人を超える水準に達しました。
企業の組織再編や人員調整の流れを受けて、早期退職は大きな社会的関心を集めています。
そもそも早期退職とは、定年(通常60歳から65歳)を迎える前に会社を退職することです。一部の企業では「早期退職制度(早期退職優遇制度)」や「希望退職制度」を設け、条件を満たす従業員に対して退職を促すケースがあります。
「早期退職制度」と「希望退職制度」の違い
「早期退職制度」は、一定の年齢や勤続年数を満たす従業員が、定年前に退職を希望する場合に割増退職金などの優遇措置を受けることができる制度で、恒常的に設けられています。
一方の「希望退職制度」は、業績悪化や組織再編を背景に、一時的に募集される制度です。リストラの前段階として活用されることが多く、人員整理の意味合いが強いといえます。
早期退職の主なメリット・デメリットは[図表2]のとおりです。
なお、近年は退職金やこれまでの資産をもとに早期リタイアを実現する人も増えています。「FIRE」という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。
しかし、一見すると自由で幸福に思える生活も、実際にはそう単純ではないようです。
実際に早期退職した元会社員の男性の事例を通じて、早期リタイアの注意点をみていきましょう。

