高齢になり一人で暮らしていると、ふとした瞬間に寂しさを感じることは、だれにでもあることかもしれません。しかし、その寂しさが引き金となり、年金と遺産で築いたはずの穏やかな生活を脅かす「落とし穴」にはまってしまうケースも……。“とあるきっかけ”によって家計破綻に陥った84歳女性の実例をもとに、その背景と対策をみていきましょう。辻本剛士CFPが解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
だって、寂しかったから…年金月12万円の84歳女性“深夜の楽しみ”が招いた家計破綻。55歳長男が父の一周忌で帰省→玄関を開けて目にした「最悪の光景」【CFPの助言】
安泰な老後に潜む「落とし穴」
岩佐加奈子さん(仮名・84歳)は、長年連れ添った夫を数年前に亡くして以来、一人暮らしを続けています。夫と暮らしていたころは、2人の年金を合わせて月23万円ほど。その範囲内で生活費をやりくりし、特別ぜいたくをするわけではないものの、穏やかな日々を過ごしていました。
夫が亡くなって以降、岩佐さんが頼りにできるのは、月12万円の年金と約3,000万円の遺産でした。岩佐さんは生活費を月12~13万円ほどに抑え、足りない部分は遺産から少しずつ切り崩しながら落ち着いた暮らしを続けていました。
しかし、夫の死からそう時間が経たないうちに、岩佐さんの家計は思いもよらない形で崩れていったのです。
玄関を開けて目にした“信じられない光景”
夫の一周忌の日。55歳の長男・隆司さんが久しぶりに実家の玄関を開けると、目に飛び込んできたのは信じられない光景でした。
リビングが“段ボール箱の海”と化していたのです。
「ちょっと母さん! なんだよこれ!」
思わず声を荒げる隆司さん。
段ボールのなかを確認すると、グルコサミンや青汁、乳酸菌飲料といった健康食品やサプリメントが大量に並んでいます。テーブルの上には「定期購読」に関する書類まで置かれており、相当数の注文が繰り返されていることがすぐにわかりました。
それだけではありません。部屋の隅には大型のマッサージ器や低周波治療器、さらには真珠のネックレスまで……高額な商品が無造作に置かれ、リビングはすっかり物置のような状態になっていました。
呆然とする長男に向かって、岩佐さんは静かに、しかしどこか開き直ったように言いました。
「だって、寂しかったのよ……」
それを聞いて、隆司さんは返す言葉が見つかりませんでした。