株式会社野村総合研究所によると、国内全世帯のうち純金融資産1億円以上5億円未満の「富裕層」は2.75%、純金融資産5億円以上を指す「超富裕層」にいたってはわずか0.21%とされています。ただ、そんな超富裕層は、一見するととても“お金持ち”には見えないケースも少なくないようです。資産5億円超えの超富裕層が“ボロボロの軽ワゴン”に乗るまさかの理由について、事例をもとにみていきましょう。辻本剛士CFPが解説します。※個人の特定を避けるため、登場人物の情報は一部変更しています。
いったいなぜ…都内一等地の豪邸に停まった“ボロボロの軽ワゴン”。資産5億円超、日本の上位0.2%「超富裕層」の63歳男性が「30年前の軽自動車」に乗るまさかの理由【CFPの助言】
資産5億円超えの経営者がいまも乗り続ける“ボロボロの軽ワゴン”
都内の閑静な高級住宅街。一歩足を踏み入れれば、手入れの行き届いた庭園と重厚な門構えが並び、土地代だけで数億円といわれる豪邸が立ち並びます。
その一角、広々としたガレージに目をやると、そこには場違いとも思える1台のボロボロの軽ワゴン車がありました。
色あせたボディには長い年月の風格が漂いますが、目立ったヘこみはなく、整備も行き届いています。約30年前に製造されたその軽自動車は、エンジンの音も軽快で、日常の足としていまも現役です。
この車の持ち主は、資産5億円を誇る63歳の経営者・谷本淳一(仮名)さん。現在は妻と2人暮らしで、会社の経営にもいまなお第一線で関わり続けています。
ベンツやフェラーリなど、欲しい車はなんでも買えるだけの資産はありますが、谷本さんがハンドルを握るのは、35歳で起業したときに購入したこの軽ワゴン車だけです。
周囲の起業家仲間のなかには、複数台の高級車を所有している人も少なくありません。しかし、谷本さんはあえてこの軽ワゴン車に乗り続けています。
30年乗り続ける軽ワゴン車に込められた「信念」
谷本さんにとって、この車は単なる移動手段ではありません。それは、苦労と挑戦の年月を刻んだ「信念の象徴」です。
「この車には、いい思い出も辛かった思い出も、全部詰まっているんです」
――35歳のとき、借金を背負ってリフォーム会社を立ち上げた谷本さん。従業員の給料のために自分は無補修で働いたり、赤字が続くなかで資金繰りに追われ、税金の滞納から差押えの通知が届いたりと、ギリギリの生活をしていた時期もありました。
「それを乗り越えていまがある。あのころの自分を忘れたくないから、この車に乗り続けているんです」
そう語る表情は、豪邸の主という肩書きとは別の、1人の経営者としての誇りを感じさせます。