高齢になり一人で暮らしていると、ふとした瞬間に寂しさを感じることは、だれにでもあることかもしれません。しかし、その寂しさが引き金となり、年金と遺産で築いたはずの穏やかな生活を脅かす「落とし穴」にはまってしまうケースも……。“とあるきっかけ”によって家計破綻に陥った84歳女性の実例をもとに、その背景と対策をみていきましょう。辻本剛士CFPが解説します。
だって、寂しかったから…年金月12万円の84歳女性“深夜の楽しみ”が招いた家計破綻。55歳長男が父の一周忌で帰省→玄関を開けて目にした「最悪の光景」【CFPの助言】
「いつでも解約可能」に隠された巧妙なトラップ
また、最近では「定期購入」を巡る問題も増えており、テレビショッピングやネット通販で一度注文したつもりが、よく確認すると「定期お届けコース」になっていたというケースも少なくありません。
さらに「契約後すぐに解約可能」とうたっていても、実際にはネット上でしか手続きできず高齢者には操作が難しい、あるいは電話窓口が混雑してなかなか繋がらないなど、解約自体を難しくする仕組みも存在します。
こうしたトラブルを避けるためには、以下のような基本的な対策が有効です。
・契約内容(特に返品条件)を必ず確認する
・テレビ画面や注文画面の小さい文字にも注意を払う
・インターネットで購入する場合は、最終確認画面をスクリーンショットで保存しておく
・衝動的に即決せず、一度時間をおいてから判断する
特に、深夜の時間帯は判断力が低下しやすく、つい不要なものを購入してしまう傾向があります。その場ですぐに購入するのではなく、一度立ち止まって十分考えたうえで購入することが大事です。
万が一トラブルに巻き込まれた場合には、すぐに国民生活センターなどの相談窓口に連絡を取ることが大切です。早期に行動することで、早期解決につながる可能性が高まります。
想像以上に難航した解約作業
母親から一連の事情を聞いた隆司さんは「とにかく、できるものから解約しよう」と決意。母と一緒に片っ端から契約内容を確認していきます。
しかし、そこからの作業は想像以上に大変でした。インターネットでしか解約を受け付けない会社もあれば、逆に電話のみの対応という会社もありました。電話をかけても、窓口が混雑していてなかなか繋がらず、粘り強く待たなければならないこともしばしば。
それでも、隆司さんは最善を尽くします。
結果として、多くの定期購入契約を解約することに成功。ただし、なかには「通電した時点で返品不可」とされている商品もあり、泣く泣く受け入れざるを得ないケースもありました。
今回のできごとを通じて、加奈子さんも隆司さんも反省。加奈子さんは「寂しさに任せて買い物を続けてしまったことが間違いだった」と口にし、隆司さんは「もっと早く母の様子を気にかけるべきだった」と後悔します。
その日から、隆司さんは定期的に母へ連絡を入れることを約束。そして加奈子さんも、これからの人生を少しでも前向きに過ごすために、近所の公園や図書館へ出かけるようになりました。
外の空気に触れ、人とのつながりを感じる時間を持つことで、孤独に押しつぶされないように努めているとのことです。
辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表/CFP