親はどこまでサポートすべきか、FPの視点

健一さん夫婦は「少しでも返済を助けてやりたい」と考えています。美大進学を認めたのは親の判断でもあり、「実家が細いせいで結婚に響いた」と娘が責められては不憫だ――そんな後悔とプライドも入り混じっているのです。

しかしFPとしては注意も伝えたいと思います。奨学金は基本的に子どもの借金であり、親が老後資金を削ってまで肩代わりすれば、親自身の生活を危うくします。そこで、現実的な解決策としては以下を提案します。

・両親が、返済の一部を支援する(退職金やボーナス時にまとまった額を援助)
・結婚後、夫婦で家計を管理し、無理のない返済計画を共有する
・両親が相手家族に奨学金利用の経緯を説明し、事前に伝えられなかったことを謝罪する

これらを組み合わせて取り組むのが現実的でしょう。

当時世帯年収1,000万円あった佐藤家でさえ、3人の子どもを大学に通わせると奨学金に頼らざるを得ませんでした。奨学金は教育の夢を支える制度ですが、「借金である」という現実を直視しなければ、結婚など人生の節目に思わぬ暗雲を招きます。

親として子どもの夢を応援する気持ちと、自分たちの老後資金を守る現実。その両立は容易ではありません。だからこそ、奨学金を借りる前に返済まで含めたライフプランを親子で共有することが不可欠です。

教育費は「親の責任」と「子の未来」の両方に深く関わるテーマ。共感と冷静な計画、その両輪で向き合うことが、後悔しないための第一歩になるのです。

加えて、返済額と老後資金の両立を確認するために、家計全体をシミュレーションしてみることも有効です。数字で「見える化」することで、親子ともに納得感を持って計画を進められるでしょう。

三原 由紀
プレ定年専門FP®