62歳になった今、三女からの一本の電話でよみがえった過去

佐藤健一さん(仮名・62歳)は、定年後も継続雇用で働く会社員です。年収は現役時代の6割ほどに下がり、およそ420万円。妻の恵子さん(59歳)はパートを続け、家計を支えています。世帯年収は現役時代から激減、老後資金をどう確保していくかが目下の課題でした。

そんな矢先、末っ子である三女の彩さん(30歳)から一本の電話が。

「お母さん、お父さん……どうしよう。婚約者のお母さんから奨学金のことを聞かれて、すごく責められてしまったの。こんなことになるなんて思わなかった。どうして私だけが、こんな思いをしなきゃいけないの……!」

泣きじゃくる娘の声に、健一さんと恵子さんは胸を締め付けられました。結婚は家族にとって待ちに待った晴れの日のはずなのに――。

電話を切った後、2人の脳裏によみがえったのは、かつて世帯年収1,000万円近くあったにもかかわらず、教育費に追われ続けた日々でした。

健一さんの年収700万円と、当時派遣社員として働いていた恵子さんの年収250万円。決して少なくない収入でしたが、3人の娘たちの教育費は想像以上に重くのしかかっていたのです。