子どもの結婚は親にとって最大の喜び。しかしその喜びが、一転して胸を締め付ける後悔に変わることもあります。千葉県在住の佐藤さん一家は、教育熱心で3姉妹を大学に通わせました。末っ子の三女は美大進学で奨学金を背負い、結婚を目前に婚約者の家族にその事実を問われます。そこで起きた"号泣電話"をきっかけに、親の後悔と奨学金の現実が浮かび上がります。本稿では、FPの三原由紀氏が奨学金や教育費の考え方について解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「私、結婚します」喜び爆発も束の間、“多額の借金を抱えた花嫁扱い”に娘、号泣。大学進学で借りた〈奨学金の残債300万円〉が幸せを阻む…まさかの事態に62歳父「こんなことになるなんて」【FPの助言】
62歳になった今、三女からの一本の電話でよみがえった過去
佐藤健一さん(仮名・62歳)は、定年後も継続雇用で働く会社員です。年収は現役時代の6割ほどに下がり、およそ420万円。妻の恵子さん(59歳)はパートを続け、家計を支えています。世帯年収は現役時代から激減、老後資金をどう確保していくかが目下の課題でした。
そんな矢先、末っ子である三女の彩さん(30歳)から一本の電話が。
「お母さん、お父さん……どうしよう。婚約者のお母さんから奨学金のことを聞かれて、すごく責められてしまったの。こんなことになるなんて思わなかった。どうして私だけが、こんな思いをしなきゃいけないの……!」
泣きじゃくる娘の声に、健一さんと恵子さんは胸を締め付けられました。結婚は家族にとって待ちに待った晴れの日のはずなのに――。
電話を切った後、2人の脳裏によみがえったのは、かつて世帯年収1,000万円近くあったにもかかわらず、教育費に追われ続けた日々でした。
健一さんの年収700万円と、当時派遣社員として働いていた恵子さんの年収250万円。決して少なくない収入でしたが、3人の娘たちの教育費は想像以上に重くのしかかっていたのです。