厚生労働省の調査によると、2022年に離婚した夫婦のうち、同居期間が20年以上の「熟年離婚」の割合が統計のある1950年以降最多に。離婚にいたる理由はさまざまですが、子育てや住宅ローンがひと段落したあと、「夫婦2人の生活を楽しもう」と考える夫が多いのに対して、妻側は必ずしも同じ気持ちではないケースもあるようで……。事例をもとに、FPの山﨑裕佳子氏が「熟年離婚」の思わぬ落とし穴とその回避策について解説します。
離婚しちゃえば?…月収8万円の60歳女性、友人に背中を押され「熟年離婚」を決意→「収入アップ」「持ち家ゲット」に大満足も、2年後に待ち受けていた“後悔の日々”【CFPの助言】
親友に背中を押された百合子さんの決断
離婚して人生を謳歌する昌美がそう言うなら……。
その後、百合子さんは夫と話し合いを重ねること7ヵ月、離婚を成立させたのでした。
離婚に際して、百合子さんの強い希望により、自宅マンションは百合子さんが引き継ぐことになりました。ただし、財産分与としてはマンションの権利だけ。夫の退職金1,500万円は夫が全額もっていくこと。これにより、百合子さんの離婚当時の預金残高は、へそくりとして貯めた200万円のみです。
65歳から受け取る予定の年金受給見込額は、月額7万5,000円。それまでの5年間の収入源は、パート収入しかありません。
早速、百合子さんは店長に相談し、勤務日数と勤務時間を増やしてもらいました。週5日勤務になり、月収は14万円程度に。これだけあれば1人暮らしもなんとかやっていけそうです。
ところが……。しばらくして、百合子さんは「3つの誤算」に気がつきました。
離婚後に気づいた「3つの誤算」
1つ目は「税金」のこと。給与明細をみると、所得税と社会保険料が引かれ、手取り額は12万円ほどになってしまっています。
百合子さんは結婚後、夫の扶養内でパートをしてきたため、社会保険料を負担することなく収入の全額が手取りとなっていました。しかし、離婚すれば夫の扶養に入ることはできず、自身で社会保険に加入しなくてはなりません。
社会保険料は収入のおおむね15%程度。離婚してすぐに会社の社会保険に加入した百合子さんも、同程度の金額が給料から天引きされるようになったのです。
2つ目の誤算は、自宅マンションにかかるランニングコストです。完済していることから住宅ローンの支払いはないものの、管理費と修繕積立金の支払いは毎月発生します。毎月2万5,000円をパート収入から賄うと、生活費として残るのは10万円弱です。
「離婚したら、たまには友人と贅沢なディナーに行きたい」「年に1回はひとり旅にも行きたい」と夢を見ていた百合子さんのセカンドライフに、暗雲が立ち込めます。
さらに数ヵ月後、慣れない生活と仕事量に疲れが溜まってしまったのか、めまいを感じる日が多くなり、百合子さんはしばしば仕事を休むようになりました。時給で働いていることから、休んだ分の収入は当然減ってしまいます。
そのようななか、医療費がかさんでしまい収支はマイナスに。百合子さんは少ない預金を取り崩すしかありませんでした。