都会の喧騒から離れ、自然豊かな環境で老後を謳歌したい……そんな考えの人は増えているようです。実際、政府・自治体による助成金などを背景に「地方移住」を検討するシニア世代は増加傾向にあります。ただ、移住後の“ほんの些細な想定外”が、それまでの幸せな日々を壊すトリガーとなることもあるようです。ファイナンシャルプランナーの石川亜希子氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
これだよ、これ!…年金月28万円・貯金2,000万円の60代夫婦「地方移住」で叶えた理想の老後に大はしゃぎ→半年後、夫婦が移住を後悔した“2つの想定外”【FPの助言】
雄大な山を眺めながら暮らしたい…誠さんの“積年の夢”
都内の分譲マンションで暮らす西沢誠さん(仮名・67歳)妻の亮子さん(仮名・68歳)。一人娘の恵理さん(仮名・36歳)はすでに独立して家庭を持っています。
夫婦は現在、あわせて毎月約28万円の年金を受給しており、退職金を含めた預貯金は2,000万円ほどです。
総務省「2024(令和6)年家計調査報告」によると、65歳以上の夫婦のみ、無職世帯における消費支出の平均は約25万6,000円となっています。また、旅行や趣味を楽しんだり、孫にプレゼントを贈ったりと、ゆとりある老後を送るための生活費は約37万8,000円です。
西沢夫婦の支出は平均並みで、日々の生活には困らないものの、贅沢はせずに慎ましく暮らす毎日です。
誠さんの趣味は登山で、会社員時代から週末になると日本全国の大小さまざまな山に出かけるアクティブ派。一方の亮子さんの趣味は家庭菜園で、2人とも自然が好きという共通点があります。
生まれも育ちも都市部だった誠さんは、老後は地方で暮らすことに憧れを持っていました。
「雄大な山々に囲まれて生活できたらどんなにいいだろう……」
現役時代から、そんな誠さんの夢をずっと聞かされていた亮子さんは、だんだんとそんな生活も悪くないと思うようになりました。
定年を迎え、老後の暮らしについて話し合った2人は、そんな誠さんの“積年の夢”を実行に移すことに。
行政が主催する地方移住に関する個別相談会に参加したり、実際に現地を訪れて話を聞いたりと、入念に準備を重ねた2人。それまで住んでいた都内の自宅は娘家族に貸すことにして、ついに山梨県のとある地域に移住することを決めました。