総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によると、高齢者のいる世帯が賃貸住宅に居住する割合のうち、高齢単身世帯は32.1%で過去最高を記録しています。一方、こうした賃貸暮らしの高齢者は、近い将来「恐ろしすぎる現実」に直面する可能性があります。具体的な事例をもとに、解決策を見ていきましょう。牧野寿和CFPが解説します。
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年寄りに厳しすぎないか…〈年金月21万円見込〉〈貯金2,500万円〉60歳・元地方銀行の支店長が「賃貸暮らし」を後悔したワケ。知人大家が遠慮がちに告げた“残酷な事実”に涙目【CFPの助言】
社宅を退去した独身男性…54歳で初めての賃貸生活を満喫
――いまの社会は年寄りに厳しすぎやしませんか。
数ヵ月前に60歳の誕生日を迎えたAさんは、涙目でそう呟きます。
6年前、Aさんはある地方銀行の中規模店の支店長でした。そのころの年収は約1,200万円で、貯金は3,000万円ほど。
決して節約はしておらず、むしろどちらかというと派手な生活を送っていたAさんですが、まとまった貯金ができていたのには訳がありました。それは「社宅暮らし」だったからです。
銀行員は本部勤務でない限り、数年ごとに県内を転々とします。そのため、独身のAさんは周囲からの“冷ややかな視線”を気にせず、入行以来ほとんど家賃のかからない社宅に入居していたのでした。
そんなAさんも、55歳で役職定年を迎えます。一時は役員への昇進を夢みていましたが、どうやらその目はなさそう。嘱託行員として引き続き勤めることはできても、銀行のルール上、社宅からは退去しなければなりません。そのため、嘱託になる前から住むところを探し始めたのでした。
「独身だし、わざわざ家を買うのもな……とりあえず賃貸でいいか」
嘱託行員としての給与では少し払い過ぎではあるものの、支店長のプライドもあり、駅にほど近い築浅のマンションに決めます。
当時のAさんは地元の銀行の支店長。54歳の独身でも、気に入った物件を難なく借りることができました。
その後、やはり嘱託行員となったAさん。給与は大幅に減額となりますが、いきなり生活水準を下げることはできません。むしろ時間に余裕ができ、元より興味を持っていた外車を購入。支店長時代の取引先の社長の紹介でその車の日本のオーナーズクラブに入会するなど、充実した生活を送ったのでした。