2019年に「老後2,000万円問題」が話題になったこともあり、老後に向けた準備に励んでいる人は多いでしょう。しかし、たとえ金銭面で万全の備えができたとしても、“意外な悩み”に直面するケースも少なくありません。そこで今回、安泰の老後が確定しているにもかかわらず「後悔している」と漏らす66歳の女性の事例から、豊かな老後を送るための秘訣をみていきましょう。牧野寿和CFPが解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
後悔しています…「年金月16万円」「貯金5,000万円」「住宅ローン完済」安泰の老後を手に入れた66歳女性の“誰にも共感されない”悩み【CFPの助言】
分譲マンションにひとり暮らし…66歳Aさんの悩み
――せっかくお金を貯めたのに、なんでこんな性格なんだろうって……後悔しています。
Aさんは現在66歳の独身女性です。短大卒業後に就職した運輸会社の財務部門に60歳の定年まで務め、その後5年間はその子会社で勤務しました。そして約1年前に完全リタイアし、すでにローンも完済した分譲マンションで、ひとり暮らしをしています。
現役時代から節約に励んでいたこともあり、月16万円ほど受給する老齢厚生年金で毎月の生活費は十分賄えています。今後さらに物価が高騰しても、年金だけで生活できる自信がありました。
そんなAさん、とあることがきっかけで30代後半から「生涯単身で生きていく」と決めたといいます。そのため、「老後にお金で困りたくない」と、節約・倹約に励み、退職金を含めた預貯金はおよそ5,000万円まで貯まっていました。
将来お金を遺す相手もなく、自分の介護や看護が必要になった時、老人ホームに入居する時、部屋のリフォームする時などに、1,000万円残しておけば十分。残りは自分の思うように使おうと考えているといいます。
しかし、長年の節約習慣が抜けず、夢だった大型4Kテレビの購入を土壇場で断念。また、旅行も職場の仲間と行く近場への温泉旅行が精一杯だといい、現役時代に「いつか世界中を回ってみたい」という夢を描いていたものの、実際には海外ツアーのパンフレットを眺めるだけでした。
Aさんの両親はすでに他界しており、ひとりっ子のAさんは実家は処分。親戚とは疎遠となり、相談できる身内はいません。
どうすればお金がストレスなく使えるのか、考えれば考えるほどわからなくなり、FPに相談することにしたのでした。