退職金などでまとまった資金を手にした際、そのお金を有効に活用したいと考える人は多いでしょう。使い道はさまざまですが、そのなかでも楽しみながら取り組めるとして注目されているのが「株主優待投資」です。とはいえ、安易に手を出した結果、大きな損失を抱えてしまうことも……。退職金を使って株主優待投資を始めた65歳男性の事例をもとに見ていきましょう。辻本剛士CFPが解説します。
これなら自分でもできそう…貯金1,300万円の65歳元サラリーマン、テレビで見た「24時間優待生活」に憧れ投資を始めた結果【CFPの助言】
優待銘柄に目星をつけ…投資に期待を膨らませるように
勉強が必要な本格的な投資とは違って、優待なら商品が届くというわかりやすい結果がある。株の知識がなくても、優待目当てであれば自分にも楽しみながら取り組めるかもしれない……。
堂ノ内さんはさっそく、証券会社の口座開設手続きに乗り出しました。
開設手続きの合間には、近所の書店へ足を運び「株主優待特集」と大きく書かれた雑誌を購入。
優待内容は食事券やQUOカードなどの金券から宿泊割引券、施設利用割引券にいたるまで、多岐にわたります。
堂ノ内さんはページをめくりながら「これは家族で行けそうだな」「このQUOカードは日用品に使える」と、目を輝かせながら欲しい優待銘柄に付箋を貼っていきました。
「たとえ株価が多少下がっても、年に1回か2回は優待が届く。生活の足しになるし、多少株価が下がっても無駄にはならないだろう」
そう考えると、これまで抱いていた「投資=難しい・危ない」という印象も薄れ、むしろ楽しみのほうが勝っていました。
楽しくて仕方がない…いつの間にか膨れ上がっていた投資額
そして、証券口座の開設申請から数日後、堂ノ内さんのもとに「口座開設完了」の通知が届きました。
「よし、始めるか」
雑誌を手に、付箋を貼った銘柄を確認しながら購入を進めます。
選んだのは、食事券や割引券、商品券がもらえる全10銘柄。なかには配当金も受け取れる企業もありました。最初は慎重に買っていた堂ノ内さんでしたが、徐々に銘柄を増やし、最終的な投資額は1,000万円に達します。
最初に届いた優待品には感動し、「お肉が届いた」「QUOカードが使えた」と、生活のなかに楽しみが増えていきました。優待を活用しながら支出を抑え、資産も増えていきます。
1年後、市場が好調だったことから、1年で資産は1,100万円に増加しました。
「投資がこんなに楽しいとは」
堂ノ内さんは、株主優待投資にすっかり魅了されていました。しかし……。