厚生労働省によると、シングルマザーの「4人に1人」が実家で親と同居しているそうです。子どものためにも親に頼ることは否めない部分がある一方、最悪の場合は親子ともに“共倒れ”に陥る危険性もあります。具体的な事例をもとに、金銭が絡む親子関係の難しさとトラブルを避けるための対策をみていきましょう。株式会社FAMOREの山原美起子CFPが解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
いい加減にしろ!…年金月38万円、69歳元教師の父の怒号に静まり返るリビング。実家に帰省した40歳シングルマザーが「父の激怒」に感謝したワケ【CFPの助言】
父に叱られた夏美さんの「その後」
父の怒声が響いたあの夜をきっかけに、夏美さんの生活は一変します。
夏美さんはようやく我に返り、すべての責任から逃避していた自分が恥ずかしく、両親や息子への申し訳なさでいっぱいになりました。
すぐに自治体の相談窓口を訪れ、事務の経験があることを伝えたところ、「自立支援教育訓練給付金」を利用して「簿記2級」の取得を勧められました。
両親とも話し合い、「資格を取得し、半年以内に就職する」「就職後は、毎月家賃と生活費を負担する」「家事や育児を親任せにしない」を条件に、実家暮らしを続けることに。
両親の献身的なサポートのもと、通信教育4ヵ月で「簿記2級」に合格。派遣社員としての再出発も決まり、夏美さんは新たな一歩を踏み出しました。
「父が叱ってくれて、本当によかった。あの言葉がなければ、自分のことが嫌いになっていたと思います。息子の教育費も貯めたいので、今後は正社員を目指します」
離婚“未満”での相談が増加中…制度の活用で、安定した暮らしを
近年は、離婚後に困ってから相談に来る人よりも、離婚を検討する段階で「生活に必要なお金を知りたい」と相談に来る人が増えています。もちろん、シングルマザーになる背景は多岐にわたり、事前に十分な準備ができるとは限りません。
だからこそ、困ったときにはまず支援制度を知ることが重要です。上手に活用すれば自立や安定した生活への近道になります。
親に頼ることが必要な場面もありますが、いずれは支えてくれる親が老いていくという現実も忘れてはいけません。長く支え合える親子関係を築くためにも、家族の支援と制度活用を両輪に、自分の人生を自分の足で歩んでいきましょう。
山原 美起子
株式会社FAMORE
ファイナンシャル・プランナー