厚生労働省によると、シングルマザーの「4人に1人」が実家で親と同居しているそうです。子どものためにも親に頼ることは否めない部分がある一方、最悪の場合は親子ともに“共倒れ”に陥る危険性もあります。具体的な事例をもとに、金銭が絡む親子関係の難しさとトラブルを避けるための対策をみていきましょう。株式会社FAMOREの山原美起子CFPが解説します。
いい加減にしろ!…年金月38万円、69歳元教師の父の怒号に静まり返るリビング。実家に帰省した40歳シングルマザーが「父の激怒」に感謝したワケ【CFPの助言】
静寂を破った父の言葉
母「申し訳ないけど、お父さんの言うとおりよ。実は今日、あなたが今後困らないためにはどうすればいいか、専門家に相談してみたの。助けを借りて一緒にがんばってみない? いまのままだと、きっと後悔するわ」
10年以内に迫る「家計破綻危機」
娘との同居で出費がかさみ、「いまの生活を続けて大丈夫だろうか」と不安を抱いた両親は、FPに家計診断を依頼していました。
シミュレーション結果は「10年以内に家計破綻のリスクがある」という厳しいもの。両親がFPに対し、「家計や援助の仕方を見直します。娘を見放すことはできませんから、自立できるよう協力したい」と伝えると、FPは次のように言いました。
FP「自立の基本は娘さんが“働いて収入を得る”ことです。母子家庭にはさまざまな就労支援がありますから背中を押してあげてください」
ブランクがあっても大丈夫…自立に向けた「4ステップ」
1.情報を得る(役所の窓口など)
自治体によっては、専門家の「ひとり親家庭サポーター」が情報提供やきめ細かな相談支援を行っています。まずは役所の窓口で「相談する」ことから始めましょう。
2.仕事を探す(ハローワークなど)
夏美さんのように「ブランクがあって……」という人でも、ハローワークでは再就職支援制度や就労支援プログラムが充実しています。また、育児との両立に不安がある場合は「マザーズハローワーク」で子育て世代に配慮した求人紹介や相談を受けられます。1人で悩む必要はありません。
3.資格を取る
「履歴書に書けるスキルがない」という人は、「資格取得」によって就職の選択肢が広がります。
たとえば、「自立支援教育訓練給付金」を使って資格を取れば、受講費用の60%(最大20万円~160万円、講座により異なる※)が支給されます。費用面で躊躇される人にもおすすめです。
※資格取得後に就職した場合、最大85%(上限240万円)が支給される講座もあり。
ただし、「簡単そうだから」という理由だけで資格を選ぶことは避けましょう。時間とお金を無駄にしないためにも、「事務職を目指すからパソコンスキル」「不動産業界で働きたいから宅建」など、自分が希望する仕事に必要な資格を選ぶことが望ましいです。
4.助成制度を利用する
安定した収入を得られるまでは、各種助成制度を積極的に活用しましょう。
シングルマザー向けの代表的な手当が「児童扶養手当」です。2025年4月分から手当額が2.7%引き上げられ、対象児童が1人の場合は最大で月額4万6,690円の支給となります。
ただし、両親と同居している場合、両親に一定の収入があると手当が減額または停止されることがあります。支給額と同居のメリットを比較して最適な選択をしましょう。
そのほか、「医療費助成」や「交通機関の割引制度」などがありますが、多くの制度は申告制です。申請しなければ支援を受けることはできません。利用できそうな制度の手続きを進めましょう。
FPのアドバイスを聞いた両親は、支援制度の充実具合に驚き、早く娘に伝えてやりたいと帰路につきました。
普段温厚な父が娘を一喝したのは「なんとか娘を自立させてやりたい」いう決意の現れでもあったのです。