核家族化が一般的となった昨今、離れて暮らす親とはどのくらいの頻度で顔をあわせていますか? 電話などでは定期的に連絡をとっていても、直接会うとなると、お盆や年末年始、GWなど、年に数回という人も多いのではないでしょうか。そこで今回、車で1時間の距離に暮らす親子の事例から、高齢の親とその子がそれぞれ気をつけておきたい「家計を守るためのポイント」をみていきましょう。辻本剛士CFPが解説します。
助けて…深夜1時、実家で暮らす81歳母からSOSの電話→車を飛ばして駆けつけた55歳長男が玄関を開けて目にした「まさかの光景」【CFPの助言】
息子の目に飛び込んできた「まさかの光景」
和也さんの目に飛び込んできたのは、玄関に積み上がった大量の段ボールでした。恐るおそる開けてみると、なかに入っていたのは健康食品や高級寝具、健康器具など、いずれも健康をうたった商品ばかりです。
母を落ち着かせたあとよく話を聞いてみると、母がSOSを出した物音の正体は、この段ボールが崩れ落ちた音だったようです。玄関や窓にも侵入の形跡はなく、外部の人物が出入りしたという事実はありませんでした。
ほっと胸をなで下ろした一方で、和也さんは異様な量の段ボールに不安をぬぐい切れません。
「これ、全部……母さんが買ったの?」
和也さんが問いかけると、康子さんは言いました。
「そうよぉ、これで健康になれるって言われたの。腰にもいいし、眠りも深くなるって。すごく親切にしてくれてね、いい人で……」
そのとき、和也さんになんともいえない不安と怒りがこみ上げてきました。訪問販売の業者が、母の優しさと不安につけ込んで、次々に高額な商品を売りつけていたのです。
後日調べたところ、その総額は200万円を優に超えていました。
母は「認知症初期」と診断…自責の念が募る和也さん
和也さんは、母が置かれている現状に唖然とし、同時に自分の認識の甘さを思い知らされました。思えば最近、同じ話を繰り返したり、約束を忘れたりすることが増えていたように感じます。
「もしかして、判断力が落ちていたのかもしれないな」
母をかかりつけの病院に連れて行ったところ、和也さんの予想どおり、医師からは「認知症の初期症状の可能性がある」と告げられました。
「もっと早く気づいていれば、こんなことには……」
自責の念が募る和也さん。しかし、すでに康子さんの貯金は目に見えて減少し、生活の土台が崩れ始めています。
これから母はどうやって暮らしていくのか、資産は守れるのか、介護はどうすればいいのか……。
和也さんは不安と責任に押しつぶされそうになり、頭を抱えました。