(※写真はイメージです/PIXTA)
通帳に刻まれた「衝撃の金額」…背筋を冷たい汗が伝う
さらに達也さんを追い詰めることが起きます。ある日、父から預かっている通帳のことがふと気になった達也さんは、久々に記帳しようと思い立ちました。銀行のATMで通帳を繰り入れ、出てきたページに目を落とした達也さんは、自分の目を疑います。
「……え?」
そこに印字されていた引き落とし額は、達也さんが当初聞いていた金額よりも、明らかに跳ね上がっていたのです。
「何かの間違いじゃないのか」
思わず声が漏れます。もう一度、目を凝らして数字を確認しますが、何度見ても金額は変わりません。当初は月額費用25万円に加えて別途数万円が引かれていましたが、直近では合計で40万円近くにもなっています。月々10万~15万円、年間150万~200万円ほど多く取り崩される計算です。そのため、残高は急激に減っていました。
「このままでは貯金が尽きてしまうのではないか」
不安が押し寄せるなか、震える手で老人ホームに電話をかけると、事務員からは淡々とした答えが返ってきました。
「はい、費用の改定ですね。昨今の物価高騰や光熱費の上昇、また介護職員の処遇改善などもありまして、1年前から利用料を改定させていただいております。契約者様である正雄様には、事前に書面にてご案内とご説明を差し上げておりますが……」
通帳を預かっているからでしょうか、父はどれほどお金を使い、どれほど残っているかに関心がなかったようです。だから月額費用の値上げのことも伝え忘れていたのかもしれません。
株式会社LIFULL senior/LIFULL 介護『介護施設入居実態調査 2025』によると、「老人ホーム入居前に想定していなかったこと」の第1位は「想定していたよりお金がかかる」(24.2%)。入居時、4人に1人がお金に関してネガティブな経験をしています。お金に関する懸念は入居後も。この物価高を受けて多くの施設で価格改定を実施。管理費や食費のほか、月額費用に含まれない費用も軒並み値上げとなり、達也さんのように思わず言葉を失ってしまう……そのようなことも珍しくないようです。
今の自分の家計に、父のホームの費用を上乗せで支払う余裕など、まったくありません。「金の心配はいらん」は過去の話。場合によっては費用の安いホームへの転居も考えるよう、正雄さんを説得するつもりだといいます。
[参考資料]
株式会社LIFULL senior/LIFULL 介護『【お金編】LIFULL 介護が「介護施設入居実態調査 2025」を発表』