「銀行だけじゃない」大企業で広がる役職定年制度の波紋

「役職定年」は銀行特有の制度ではありません。人事院の「令和5年民間企業の勤務条件制度等調査」によれば、役職定年制度を導入している企業の割合は全体で20.8%となっています。特に従業員数が多い企業ほど導入率が高く、従業員500人以上の企業では38.7%に達しています。

この調査では、役職定年制度を設けている企業における役職定年年齢も明らかになっています。部長級の役職定年年齢は「55歳」が33.5%と最も多く、次いで「60歳」が19.6%、「57歳」が19.3%となっています。課長級では「55歳」が40.3%と最も多く、「60歳」が19.2%と続いています。つまり、多くの企業では55歳前後で役職から外れる傾向があるのです。

役職定年制度は、企業にとって人件費削減と若手登用の両立を図る手段として機能しています。しかし、当事者にとっては突然の収入減少という厳しい現実をもたらします。

60歳以降の「第三の人生」…年収半減の衝撃と資産形成の重要性

60歳の定年後、多くの企業では再雇用制度を利用して65歳まで働くことができます。しかし、その待遇は厳しいものです。

日経BPが2021年1月に40~74歳を対象に実施した「定年後の就労に関する意識調査」(約2,400人対象)によれば、定年後再雇用では勤務時間や日数は63.5%が「定年前と同水準」と回答している一方、年収については「定年前の6割程度」が20.2%と最も多く、「5割程度」が19.6%、「4割程度」が13.6%と続いています。つまり、働く量はほとんど変わらないのに、給与が4~6割減となるケースが過半数を占めているのです。

「でも年金があるから大丈夫では?」と思われるかもしれません。しかし、厚生年金の満額受給は65歳から。60~65歳は「年金空白期間」となります。また、厚生労働省の統計によれば、令和5年度の厚生年金の平均受給額は月額15万円程度。これに国民年金を合わせても、現役時代の生活水準を維持するには不十分です。