(※写真はイメージです/PIXTA)
老後は都会の喧騒から離れて…定年後に実現した地方暮らし
都内郊外に住む山本誠さん(74歳・仮名)。住まいは最寄駅からバスで15分、バス停から徒歩5分というロケーション。木造アパートの2階の一室で6畳一間、家賃は5万5,000円。室内には最低限の家財道具が置かれ、壁に日に焼けた一枚の写真が飾られています。
そこに映るのは、南国の花々に囲まれ、満面の笑みを浮かべる山本さん夫婦。長年勤め上げた都内の印刷会社を定年退職し、妻と地方移住を果たした直後の写真です。
「あのころが、人生で一番楽しかったかもしれません」
小さなテーブルに置かれたのは、今日の夕食。スーパーで買った総菜とご飯とみそ汁。ご飯は1週間に一度4合を炊き冷凍保存。みそ汁も“味噌玉”を作って冷凍保存しているそう。
「今は何でも高いから。工夫してやっていかないと、生活していけない」
定年を迎えたら東京を離れ、地方で暮らしたいというのは、夫婦共通の夢でした。しかし、実際にそのときがきたとき、大いに迷ったといいます。貯蓄と退職金合わせて2,000万円ほど。60歳定年で仕事を辞めた場合、年金を受け取れるようになるまでは無収入。その間の生活費はどうしたらいいのか――悩みの種でした。そこで決断したのが「年金の繰上げ受給」。年金は原則65歳から受け取るものですが、希望すれば60~75歳の間で受給開始のタイミングを選ぶことができます。65歳よりも早く受け取るのが「繰上げ受給」であり、年金を早く受け取れるかわりに0.4%/月ずつ減額。受取額は最大24%減ります。(山本さんのときは、減額率0.5%、最大30%の減額)。
「想定では65歳から18万円弱の年金がもらえました。60歳から受け取ったら月12万円ほど。地方であれば年金だけでも暮らしていけると思い、決断したんです」
繰上げ受給を選択することで、日々の生活費の目途はつき、800万円をはたいて中古の戸建てを購入。広大な庭で家庭菜園を楽しみ、近くの海で釣り糸を垂れる――都会の喧騒とは無縁の、穏やかでゆとりのあるセカンドライフがスタート。まさに夫婦が思い描いていた通りの生活が始まったのです。