子育ての先。独立した子どもが、ある日、「結婚したい人がいる」と紹介される――誰もがそんな未来を思い描いているでしょう。しかし、そこで一波乱ということも珍しいことではないようです。
冗談だろ…〈年金月18万円〉65歳の父、35歳ひとり息子の「結婚したい人」の紹介に感涙。待ち合わせのレストランに登場した婚約者に絶句したワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

ひとり息子が紹介する結婚相手、衝撃の正体

正雄さんは、この日のためにジャケットを新調。恵子さんもきれいめなワンピースを着て、少し緊張した面持ちでレストランに向かいました。一体、どんなお嬢さんが来てくれるのだろうか――期待は、最高潮に達していました。

 

約束の時間である12時。レストランの入り口に、拓也さんの姿が見えました。その隣には、すらりとした女性が立っています。遠目にも、上品で落ち着いた雰囲気が伝わってきました。正雄さんは「いいお嬢さんじゃないか」と呟き、安堵の息をつきました。

 

二人がテーブルに近づいてくるにつれ、正雄さんは自分の目を疑いました。拓也さんの隣にいる女性は、想像していた「若々しいお嬢さん」とは、明らかに雰囲気が違ったのです。洗練されたスーツを着こなし、自信にあふれたその佇まいは、まるでやり手の経営者のようでした。さらにその隣には、幼い子どもが二人。

 

「父さん、母さん、紹介するよ。佐藤美咲(仮名)さん。そして、お兄ちゃんが悠馬くんで、弟は日向くん」

 

にこやかに頭を下げる美咲さんと、緊張が隠せない二人の子ども。美咲さんは拓也さんの10歳年上の45歳。悠馬くんは12歳、日向くんは10歳だといいます。何とか自然に振る舞おうとしますが、正雄さんは、顔が引きつっているのが自分でもわかりました。

 

「驚かせてごめんね。僕たち、家族になることにしたんだ」

 

ひとり息子の妻となる人が10歳年上のバツイチ。しかも息子は結婚と同時に、小学校高学年の二人の男の子の親になる――想像だにしなかった展開に正雄さんはついていけません。


二人の付き合いは、もう7年にもなるとか。初めから結婚を意識していたという拓也さんですが、優先したのは悠馬くんと日向くんの気持ち。自然と家族になれるまで、根気強く待ったといいます。そして今回、二人から「お父さんになって」とお願いされ、結婚することになったというのです。

 

帰り道、恵子さんは「拓也も見る目があるじゃない」と明るく言うと、それまで黙り込んでいた正雄さんが「よりによって、10歳年上の、しかも二人の子持ちなんて……」とポツリ。すると「私は知っていたわよ、拓也がお付き合いしている人が美咲さんだということ」と恵子さん。正雄さんは「なぜ、俺には知らせなかったんだ」と怒りを露わにします。

 

「あなた、考えが古いから絶対反対すると思ったのよ。結婚なんて、するもの同士が幸せならそれでいいじゃない。それよりも、悠馬くんと日向くんに早く『おじいちゃん、おばあちゃん』って呼んでもらえるように頑張らないと」

 

厚生労働省『令和5年 人口動態統計』によると、2023年の婚姻数は47万4,741件。そのうち、夫妻とも初婚は35万6,124件。婚姻件数全体の約25.2%は再婚で、夫初婚・妻再婚の組み合わせは3万0,739件。婚姻数の約6%を占めています。

 

妻が夫より年上である夫婦も、結婚相手が子持ちというケースも珍しいことではありません。しかし正雄さんには、すぐに受け入れることはできません。自身の価値観が古いことは理解しつつも、心から息子夫婦を受け入れるまでは、もう少し時間が必要だといいます。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和5年 人口動態統計』

総務省『令和2年 国勢調査』