子育ての先。独立した子どもが、ある日、「結婚したい人がいる」と紹介される――誰もがそんな未来を思い描いているでしょう。しかし、そこで一波乱ということも珍しいことではないようです。
冗談だろ…〈年金月18万円〉65歳の父、35歳ひとり息子の「結婚したい人」の紹介に感涙。待ち合わせのレストランに登場した婚約者に絶句したワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

ひとり息子の吉報に、老後の不安も吹き飛んだが…

中堅建設会社で65歳定年まで勤め上げた鈴木正雄さん(65歳・仮名)。月18万円の年金生活をスタートさせました。妻の恵子さん(63歳・仮名)は近所のスーパーでパートをして家計を支えています。贅沢はできませんが、穏やかな老後。そのようななか、ひとつだけ気がかりなことがありました。35歳になるひとり息子、拓也さん(仮名)のことです。

 

IT企業で働く拓也さんは、仕事も順調な様子です。しかし浮いた話がまったく聞こえてこないのです。正雄さんの友人たちからは、次々と「孫が生まれた」という報告を受けるたびに、「うちの息子はどうなっているんだ……」と恵子さんに疑問をぶつけます。恵子さんは決まって、「あの子にはあの子のペースがあるのよ」となだめてくれる――それがお決まりのパターンになっていました。

 

厚生労働省『人口動態統計(概数)』によると、2024年の日本の平均初婚年齢は、夫が31.1歳、妻が29.8歳。一方、総務省『国勢調査』によると、2020年、男性の生涯未婚率(50歳時未婚割合)は約28.3%、女性は約17.8%。50年前に比べると、男性は約26.55ポイント、女性は約14.48ポイント上昇しました。「結婚しない」ことがそれほど珍しいことではなくなった昨今ですが、それでも正雄さんには「ひとり息子には自分たちと同じように結婚してほしい」という思いがあるようです。

 

しかし、その日は突然訪れます。

 

「父さん、母さん。紹介したい人がいるんだ。結婚を考えてる」

 

電話でそんな報告を受けたとき、正雄さんの目から涙が溢れました。「おお、そうか! やっとか!」。隣に座る恵子さんの顔にも笑顔があふれました。


「どんな方なんだ?」「お仕事は?」「おいくつなんだ?」矢継ぎ早に質問する正雄さんに、拓也さんは「きちんと紹介するから。来週の土曜日のお昼、食事でもどうかな?」と冷静に提案。駅前のホテルのレストランで会食することになりました。