Aさんの“悩みのタネ”

Aさんの実家は、都心から車で2時間ほどのところにある地方都市です。Aさんが実家を出たあとも両親は仲睦まじく暮らしていましたが、約1年前に父親のCさん(享年84歳)が急死。それ以降、母親であるBさんは実家に一人きりの状況でした。

Aさんは一人になった母を不憫に思い、葬儀や遺産分割を終えひと段落したころ、母に言いました。

「よかったら東京に遊びに来ない?」

するとBさんはAさんの誘いに気をよくしたのか、父の存命中は2~3度しか来たことのないAさんの住まいに、頻繁に顔を出すようになりました。

最初のうちは「寂しいだろうから」と気を利かせて、休みの日にはBさんを連れて高級ブランド店や名の通ったレストランへ出かけていたAさん。しかし、しだいに気乗りしなくなっていきます。

なぜなら、BさんがAさんの予定もかまわず居座るようになったからです。

Bさんはなかなか実家に帰ろうとしないどころか、勝手に冷蔵庫を開け、Aさんの予定も構わずにご飯を作るように。

さらに、ブランド品のショッピングに味をしめたのか、「今度の休みはいつ? こないだ出たばっかりの〇〇のバッグが欲しいんだけど」などと“おねだり”が始まったのです。

仕事が忙しいAさんは、残業して帰宅後、都心の夜景が見えるリビングで晩酌をするのが楽しみでした。いまでは夜遅くまでリビングに母が居座り、心が休まる暇もありません。

さすがに我慢の限界だと、ある日Aさんは母親に「話がある」と切り出します。

「いい加減にしてくれないか? たしかに遊びに来ていいとは言ったけど、あんまりだよ」

するとBさんは、怪訝な表情で次のように言いました。

「あなたをここまで育てたのは誰? ようやく自由な時間ができたのよ。少しくらい甘えたっていいじゃない」

「だからって、好き勝手にしていいわけないだろ? 母さんが来てから生活費が格段に上がっているし、ここは俺の家なんだから少しくらい遠慮してくれよ」

「じゃあ、あんたにとって私は邪魔者ってわけ!? お父さんもいなくなって独りぼっちの母親に出て行けって言うのね!?」

「いや、そういうわけじゃないけど……」

ゆくゆくは同居する可能性もあると考えていたAさんですが、Bさんのまさかの行動に疲弊。おひとりさまで迎える老後を見据え準備を始めていたこともあり、自身の家計に危機感を抱くように。