晩婚化や長引く景気低迷などさまざまな背景から、近年「高齢の親と未婚の子」という家族構成の世帯が増えています。たとえ子どもが順調なキャリアパスを歩んでいたとしても、この「高齢の親」の存在が将来に悪影響を与える場合もあるようで……。事例をもとに詳しくみていきましょう。牧野FP事務所合同会社の牧野寿和CFPが解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
話がある…〈年収1,500万円〉〈貯金4,000万円〉湾岸タワマン住まいの56歳サラリーマン「リビングに居座る79歳母」に告げた“苦言”【CFPの助言】
「結婚しない中高年」が増えている
厚生労働省「2022年国民生活基礎調査の概要」によると、65歳以上がいる世帯のうち「親と未婚の子のみの世帯※」の数は、2001年15.7%、2010年18.6%、2022年には20.1%と、増加傾向にあります。特に、ここ10年は20%台が続き、全体の5分の1を占めています。
※ 親と未婚の子のみの世帯……「夫婦と未婚の子のみの世帯」と「ひとり親と未婚の子のみの世帯」をあわせたもの。
また、国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2025年版)」によると、50歳時の未婚割合(2020年)は、男性が28.25%、女性が17.81%となっています。この20年で男性は2倍、女性は3倍に増えており、100年間という長いスパンで見ると、男性は約13倍、女性は9.8倍もの増加率となっています。
[図表]男女別50歳時の未婚割合 出所:国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2025年版)」をもとに筆者作成。なお、50歳時の未婚割合は、45~49歳と50~54歳の未婚割合の平均値から算出したもの。
このように、「高齢の親と未婚の子」の世帯が増えた背景には、価値観の多様化や晩婚化、また経済的な理由などがあると考えられています。しかしその一方で、個々の家庭にフォーカスすると、その家ごとにさまざまな“事情”があるようです。
タワマン暮らしのエリートが気を揉む「高齢の母」の存在
56歳のAさんは、湾岸エリアのタワーマンションに住む独身男性です。
Aさんは自身が描いた人生設計を着実に実行することを心がけており、自ら選んだ独身生活を謳歌していました。数回の転職のたびにキャリアアップし、現在の年収は1,500万円。湾岸のタワマンも自身の“終の棲家”として購入したものです。
高収入にタワマン暮らしと、順風満帆な人生を歩んできたAさん。このまま行けば、老後も“勝ち組確定”……といいたいところですが、最近頭を悩ませていることがあります。
それは、自身の母親であるBさん(79歳)の存在です。