東京23区の新築マンション市場が、ついに全区で平均平米単価100万円を突破し、かつてない高騰を記録しています。都心部だけでなく周辺区にも波及する価格上昇は、住宅購入者の選別を一層鮮明にし、「買える人」と「買えない人」の格差を拡大させています。再開発や建設コスト増など複合的な要因が絡み合い、今後も住宅市場の階層化と固定化が進む見通しです。
東京23区、ついに「全区で1平米100万円超え」の異常事態。新築マンション価格高騰で「買える人・買えない人」の線引きが鮮明に (※写真はイメージです/PIXTA)

再開発が引き起こす価格帯の分裂と固定化

2023年から2025年にかけての変化を価格帯の分布から見ると、階層構造の変化が明確です。2023年時点では、「上位(1平米あたり200万~250万円)」・「中堅(1平米あたり150万~200万円)」・「標準価格帯(1平米あたり100万~150万円)」で大半の区が収まっていましたが、2025年には1平米あたり400万円超えの「最上位」や、1平米あたり300万円~400万円といった「高価格帯」という新たな層が加わり、5階層へと細分化されました。

 

これは価格上昇によって単なる一律のインフレではなく、エリアごとの階層固定が進んでいることを示しています。特に港区は他の区と一線を画す存在となり、文字通り「別格」の価格帯に属しています。一方で、かつて標準価格帯にいた中野区や目黒区といったエリアは、複数の億ション供給により高価格帯へと押し上げられました。こうしたエリアは、山手線内や都心へのアクセスの良さを背景に評価が高まっています。

 

興味深いのは、この2年間で都内の価格帯において上下移動が起きたのは主に中堅〜上位層である点です。標準層以下の価格帯はほぼ消滅し、価格の下限が切り上がっているともいえる動きをしています。これは、年収層による住宅購入可能性に大きな影響を与え、もはや「都内に家を買う」こと自体が一部の富裕層に限られる状況になりつつあるといえるのです。

 

この背景には複数の要因があります。都心部では国家戦略特区を含む再開発が相次ぎ、再整備エリアでは建物の性能や環境基準も引き上げられました。結果として、旧来型の中価格帯物件の供給余地が減り、平均価格そのものが引き上げられる傾向にあるのです。これが中堅区の価格をも押し上げ、結果として価格帯の固定化・格差の拡大を生んでいます。

 

一方、買い手側の動きも二極化しています。金利上昇を前に「今が最後のチャンス」と購入を急ぐ層と、「この価格では手が出ない」と賃貸に留まる層の分断が進行中。特に初回購入層にとって、100万円を超える平米単価は重く、頭金やローン審査の面でもハードルが高まっています。これにより、都内での居住希望を持ちながらも、近郊県への移住や、中古市場への流入が加速する可能性もあるでしょう。

 

今後も東京23区では再開発プロジェクトが複数控えており、供給のハイエンド化がさらに進むと予想されます。価格帯の階層化と固定化の行方は、住宅市場だけでなく、都市における人口構造や居住環境のあり方にも大きな影響を与えるでしょう。住宅を「買える人」と「買えない人」の線引きが、かつてないほど明瞭になっています。

 

[参考資料]

株式会社LIFULL『LIFULL HOME'S が東京23区の2025年新築マンションの平均価格を調査』