7月7日には全国200地点以上で35℃を超える「猛暑日」となるなど、今年も暑さの厳しい夏がやってきました。そんな夏に気をつけたいのが、海や川、池などでの「水難事故」です。警察庁によると、2024年の全国の水難事故発生件数は1,535件と、前年よりも143件増加したといいます(令和6年における水難の概況等)。夏に知っておきたい「川遊びの危険性」について、『47都道府県の怖い地理大全』(彩図社)よりみていきましょう。
這い上がるのは困難…ため池の隠れた危険
水場に恵まれない地域が農業用水を確保するため、水を蓄えておくようにつくられた池。それがため池だ。実は、水難事故の多発地でもある。農林水産省によると、ため池での死者は毎年平均25人。特に5月から9月の間に集中している。釣りや遊びでの事故が多いというが、点検中の転落も後を絶たない。
ため池には川のような流れや海のような波はない。斜面の傾斜も25度ほどで、水面までの長さも数メートル程度。子どもでも上がることができそうで、安全に思える。しかし、ため池は人の侵入を想定していないので、上がるのは決して楽ではない。斜面は漏水防止のためコンクリートで保護されており、さらにゴム製の遮水シートを張っている池も多い。階段が設けられていない場所も少なくない。
そのため、一度落ちたら這い上がるのは極めて難しい。水に濡れると足がシートやコンクリートで滑り、すぐにまた水へと転落してしまう可能性もある。しかも斜面は水中まで続いているため、そもそも岸に上がること自体が難しい。そうして何度も落下するうちにパニックを起こし、水死や低体温症での死亡に繋がるのだ。
2021年5月にも、香川県丸亀市のため池で釣り中の父親と息子が水死している。こうした事故を防ぐべく、各ため池では上がりやすい構造の斜面ブロックの整備や安全ネットの設置、防護柵の改修による侵入防止を進めている。
だが全国に約15万カ所あるため池のうち、3パーセントは所有者が不明だ。2019年7月施行の農業用ため池管理保全法で、自治体が管理者らに代わって安全対策工事を実施することが可能となったが、実態は把握されていない。また、資金や人手不足で整備が進まない自治体も多いようだ。
そのような場所では、壊れた防護柵から子どもや釣り人が侵入する危険がある。見た目穏やかでも、ため池は隠れた危険地帯。近寄ることは避けたほうがいいだろう。
地形ミステリー研究会
オフィステイクオー
