老人ホームに入居する“若年層”が増えている

老人ホームは「介護が必要になってからお世話になる場所」と考えている人が多いかもしれません。

ところが、近年では自立生活が可能な60歳前後のシニアが“終の棲家”として老人ホームを選択するケースも増えています。特に注目されているのが、いわゆる「住宅型高級老人ホーム」です。

こうしたエグゼクティブ向けの老人ホームは、まるでホテルのような外観と設備、洗練された居室を有し、一流レストラン並みの食事が提供されるのが特徴です。また、ラウンジや図書館、プール、温泉大浴場なども完備されていることが少なくありません。さらに、なにかあったときの医療、介護へのアクセスもきちんと確保されています。

ただし、“高級”というだけあって費用面のハードルは高く、「みんなの介護」掲載データによると、高級老人ホームと呼ばれる施設の入居一時金の全国平均は1,566万円、平均月額利用料は38万円となっています。

都内に目を向けると、目黒区、世田谷区などはさらに相場が上がり、入居一時金の平均は2,500万円超、平均月額利用料は60万円にのぼります。

このように、相当な費用が必要であるにもかかわらず、高級老人ホームへの入居希望者が増えている背景には、なにがあるのでしょうか。

そこには、「子どもに迷惑をかけずに終末期を過ごしたい」「おひとりさまの老後不安を解消したい」といった理由もさることながら、「この先は手放しで人生を謳歌したい、自由に老後を楽しみたい」という思いが強くあるようです。

とある“健康自慢”の65歳夫婦の事例から、その実態を紐解いていきましょう。