浦野夫妻の「その後」

話をすると、見学に付き合ってくれた長男だけでなく、長女や次男も老人ホームへの入居に好意的です。

「父さんと母さんの好きにしていいよ。いままで一生懸命働いてきたんだから。自分たちのお金は自分で使って」

資金が足りなくなったら、自宅を売る可能性もあることを告げましたが、これにも納得してくれました。

その後、とんとん拍子に話は進み、希望の高級老人ホームへ入居することに。現在、入居してから1年が経ちましたが、ホームでの生活は水に合っているようです。

「家事から解放され、趣味に没頭できる環境は本当に幸せです。もう、前の生活には戻れません。長男夫婦と住んでいる距離が近くなったことで、孫と頻繁に会えるのもうれしいポイントです」

夫婦は心から楽しそうにお話を聞かせてくれました。

リスクも少なくない…入居は慎重に検討を

今回の事例のように、資産のある夫婦が“終の棲家”として高級老人ホームを選択するケースが増えています。うまくいけば幸せな毎日が待っていますが、そうでない場合も想定しておいたほうがいいでしょう。

いまは健康であっても、一生涯それが続くという保証はありません。また、今回のケースの場合どちらかが先に亡くなれば年金収入は半減します。将来的に起こり得るさまざまなケースを想定して施設の利用料を払い続けられるのかシミュレーションしてみることが重要です。

また、舞い上がって夫婦だけで話を進めた結果、あとになって子どもが「そんな話聞いていない!」と騒ぎトラブルに発展するケースも見聞きします。あとになって揉めないためにも、自分たちの考え方や価値観を日頃から子どもに共有しておきましょう。

山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI
代表