バブルの時期にマンション建設ラッシュが起こるほどリゾート地として栄えたエリア。そのマンションが今ではタダ同然で手に入ることも少なくありません。そういった格安物件に魅かれる人は少なくありませんが、無計画で購入に踏み切れば思わぬ代償を支払うことになることも……。今回は、定年退職を機にリゾート地へと移住した男性の事例と共に、移住先を選ぶ際の注意点を小川洋平FPが詳しく解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
これは無理だ…年金月11万円、資産500万円の66歳元会社員、「東京は高すぎる」と新潟でリゾートマンション購入。「タダ同然の安さ」に歓喜→移住も、1年足らずで「もう帰りたい」苦悩の日々【CFPの助言】
第二の人生を懸けた移住の決断…「購入価格10万円」に歓喜
佐野誠一さん(仮名・66歳)は、都内で長年システムエンジニアとして働いていました。定年退職を機に、都内の賃貸を引き払って雪深いリゾート地に移住しました。
年金は月11万円、退職後に手元に残った貯金はわずか500万円。老後の生活を送るには不安な金額です。65歳で定年を迎え、賃貸住宅の契約更新を前に、これからの人生にかかる住居費をなんとか上手く節約できないか……そう考えた佐野さん。そして選んだのが、かつてバブル期に栄えた新潟県湯沢町の苗場のリゾートマンションでした。
そのマンションの価格は、たった10万円。家賃1ヵ月分のような金額で購入できるという破格の中古物件です。外観は古びていましたが、内装はそれなりにきれいでした。何より10万円という価格が魅力的です。
桁を見間違えたのかと思うくらいの安さで、年間の管理費と修繕積立金を足しても30万円弱。月々の出費は、都内の賃貸暮らしの3分の1程度で済む計算でした。
「まさに夢のようだ」と、すぐに購入を即決しました。
引っ越した当初は、都会に比べれば不便さこそあるものの、週に1回街中のスーパーに買い物に出かける程度だったため、生活するには十分。元々あまり他人との交流も無かった佐野さんにとって、この土地は静かで過ごしやすく、これといった不満もありませんでした。
しかし、そんな夢のような生活がわずか数ヵ月で終わりを告げることになるとは、このときの佐野さんには知る由もありませんでした。