
働き盛りの夫が急逝…妻が“2度泣いた”ワケ
「ねぇ、パパが帰ってこないのって、まだ入院してるからだよね?」
小学3年生の娘・あかりちゃん(仮名)が発したこのひと言に、母・美咲さん(仮名・41歳)は心を締めつけられた。
――美咲さんの夫・祐一さん(仮名・42歳)は、都内の中小企業で働く会社員だ。夫婦は住宅ローンを組んで、新築マンションを購入したばかり。りくくん(仮名・15歳)とあかりちゃん、2人の子どもたちの成長を楽しみに仕事にも家庭にも全力を注ぐ、ごく普通の家庭だった。
そんなある日のこと。祐一さんはいつものように朝「行ってきます」と言ったきり、帰らぬ人となった。会社に行く道すがら倒れたのだという。死因は心筋梗塞だった。
「さっきまで元気だったのに……」
つい先刻まで元気だった夫の突然の死に、美咲さんはしばらく現実を受け入れることができなかった。子どもたちにショックを与えないよう、美咲さんはしばらく努めて気丈に振る舞い、夫が不在の理由については「パパは長いあいだ入院することになった」と伝えていた。
一家の大黒柱の“慢心”が招いた悲劇
幸い、住宅ローンには団体信用生命保険(団信)が適用されたことから残債はゼロになった。しかし、それで生活が安定したわけではない。
それまでパート勤務だった美咲さんの手取り月収は13万円ほど。夫の死後、フルタイムに切り替えることにしたものの、育ち盛りの2人の子どもと暮らすには到底足りない。
また、美咲さんを苦しめた理由はもう1つある。それは、祐一さんが生命保険に入っていなかったことだ。
子どもが2人いるにもかかわらず、祐一さんは「まだまだ若いんだし、保険なんて必要ないよ。毎月の保険料がムダになる。それよりも浮いた分で子どもたちに美味しいものでも食べさせよう」と、生命保険への加入を拒んでいた。
もし生命保険に加入していた場合、加入している保険やプランによるものの、一般的に1,000万円~3,000万円の死亡保険金が支払われる。しかし、祐一さんは生命保険に入っていなかったため、美咲さんには一銭も入らない。長男のりくくんは希望していた私立高校を諦め、地元の公立へ進まざるをえなかった。
夫の急逝と生命保険未加入で、美咲さんは“2度泣く”ハメになったのだった。