炭水化物は体内のエネルギー源であり、摂取すると血糖値が上昇します。しかし、血糖値を抑えるために「炭水化物を摂らない」という方法は避けたほうが良いことをご存じでしょうか? 糖尿病専門医である大坂貴史氏の著書『血糖値は食べながら下げるのが正解』(KADOKAWA)より、バランスのよい食べ方を身につけるための簡単な方法と、意外と知らない炭水化物の重要性を紹介します。
血糖値を下げるために「炭水化物を抜く」が良い方法とはいえないワケ【糖尿病専門医が解説】
炭水化物を抜くと脂質が増えがちに…栄養素はバランスよく
「“野菜ゾーン”にのせるのは、“でんぷん質の少ない野菜”です。具体的に言えば、アスパラガス、ブロッコリー、にんじん、キャベツ、レタス、きゅうりなどです。これらは炭水化物が少ないため、血糖値が上がりにくく、ビタミンやミネラル、食物繊維も豊富です。さつまいもやじゃがいもなどの“でんぷん質のあるいも類”は、炭水化物ゾーンに含めてください」
「はい」
「“タンパク質ゾーン”には、脂肪分の少ないタンパク質を含む食品を選びましょう。魚、とり肉、牛や豚肉ならヒレやモモなど赤身の部位、卵などがおすすめです。横田さんは、肉が苦手とおっしゃっていましたね?」
「たくさんは食べられないのです」
「でしたら、あまり心配はないと思います。ただ、肉類が少ない分、魚介や卵で補いましょう。厚揚げ、豆腐などの植物性タンパク質も積極的に摂りましょう」
「わかりました」
「最後に“炭水化物ゾーン”です。炭水化物が多い食品は、穀類やいも類です。炭水化物は血糖値を上げやすいですが、米でも大丈夫です。もち麦や押し麦、雑穀を混ぜたりすれば、よりベター。オートミールなどの精製されていない食品であれば、ビタミンやミネラルが豊富なので、炭水化物の中でも血糖値を上げにくいです」
「先生、よくわからなくなりました。炭水化物は血糖値を上げやすいんですよね? それなら、食べないほうがよくないですか?」
「炭水化物の一部は“食物繊維”です。穀類は食物繊維も豊富なので、きちんと摂ることで血糖値の上昇を抑える働きが期待できます。食物繊維を摂ることで便のカサが増えて、便秘も解消されやすいんですよ。また、炭水化物を抜くと脂質が増えやすい食事になりがちで、そうすると体に脂肪を増やすことにつながります」
「……なるほど」
「“栄養素はチームワーク”です。さまざまな食品から栄養素をバランスよく摂ることで、体が作られ、きちんと動かすことができ、体から不要なものを出す力が発揮されます」
「“プレート法”を試してみます。家でお皿を探してみます!」
先生は変わらずほほえんでいる。
〈先生からの処方箋〉
栄養素はチームワークが大切。
バランスのよい食べ方を「プレート法」で身につけよう。
大坂 貴史
糖尿病専門医・指導医
総合内科専門医