空き家投資の誤算…3軒購入したのに「家賃収入ゼロ」の現実

青柳さんが最初に直面した問題は、投資用に購入した空き家が全く借り手がつかなかったことでした。移住前、地元の不動産屋から「この物件は300万円で買えます。300万円程度のリフォームをして貸し出せば、月5万円の家賃が見込めます」と勧められ、計3軒の空き家を総額900万円で購入。リフォームに1,000万円近い投資をしました。

ところが、リフォーム後に出した広告には全く反応がありません。不安になった青柳さんが不動産屋に相談すると、こんな返答が。

「最近は移住者もそう多くはないですからね。タイミングもあるので、少し気長に待ってみませんか」

しかし、しばらくたっても反応はなし。青柳さんは、移住前に地方移住者向けの成功事例や空き家活用の特集記事を読みあさり、「今は地方が熱い」と信じて疑いませんでした。不動産屋から提示された家賃相場や需要予測にも特に疑問を持たず、「多少の空き期間はあるだろうが、家賃収入はすぐに得られる」と楽観視していたのです。

しかし、実際にはその町では移住ブームもすでに一段落し、地元住民の間では「安い家は余っている」「空き家は買って住むのが普通」という意識が根強く、わざわざ賃貸で借りる需要はほとんどなかったのです。

さらに追い打ちをかけるように、想定外の出費が発生しました。台風による屋根の損傷、厳しい冬の水道管凍結による床下浸水など、投資用物件の維持費は年間で約50万円。しかも収入はゼロ。退職までの間に積立で貯めた資金と退職金を切り崩して対応する日々が続きました。

「地方は物価が安い」という思い込みも、現実とは異なりました。プロパンガスの料金は東京の都市ガスの倍以上、車の維持費も年間50万円以上かかります。結果、想定していた月25万円の生活費は、実際には月35万円に膨れ上がりました。

「このままでは数年で資金が底をつく……」。不安な状況は妻との関係も悪化させ、青柳さんは東京への帰還も視野に入れ始めていました。