相続争いは、決して富裕層だけの話ではありません。資産が少ないからこそ、「わけ方」が問題となり、感情のもつれも大きくなりがちです。本記事では、母の相続をきっかけとした3人兄弟の葛藤から、相続トラブルへの備え方についてFPオフィスツクル代表・内田 英子氏が解説します。
あまりにも不自然…年金暮らしの90歳母が遺した「4冊の貯金通帳」〈残高計170万円〉に3兄弟真ん中っ子・63歳次男が覚えた「強烈な違和感」の真相【FPの助言】
4冊の預金通帳…母の想いはどこへ?
Aさんは63歳。先日、90歳の母を見送りました。年金生活だった母が亡くなったきっかけは、いつものように出かけた先で遭遇した交通事故。約1ヵ月半の入院から退院したものの、その1ヵ月後に、誤嚥性肺炎で息を引き取りました。
Aさんは、妻との二人暮らし。一人暮らしの母とは近居しており、入院の手続きや治療に準備が必要な際、度々母のもとを訪ねサポートしていました。
「90歳とは思えないほど活発だったのに、死ぬときはあっという間なんだな……」空っぽになった家を見渡しながら、Aさんは信じられない思いでいました。
Aさんには、65歳の兄と59歳の弟がいました。それぞれ実家を離れ遠方に暮らしていたため、母の葬儀が久しぶりに兄弟3人そろって顔を合わせる機会となりました。
兄と弟とともに葬儀を終え、相続手続きを進めていたAさんは、母名義の預金通帳を見つけました。なかには使用済みとなっているものもありましたが、几帳面な母らしく、使用中の4冊の通帳はまとめてキャッシュカードと一緒に一ヵ所に保管してありました。母を偲びながら銀行で記帳し、何気なく通帳の残高を確認したAさんは、大きな違和感を覚えました。残高が合計で170万円しかなかったのです。
特別裕福な家庭ではなかったため、もともと母が家以外にまとまった財産を持っているとは思っていませんでした。しかしAさんは、生前母からこんな話を聞いていたのです。
「いつもありがとう。お父さんが亡くなったとき、生命保険金から300万円がおりたから、それはあなたにあげるからね」と。
おかしいと思ったAさんは、通帳をすべて確認していきました。すると、ちょうど母が入院したころから、5万円、10万円、100万円……と、立て続けに不自然な引出記録がある口座に気づきました。あまりにも不自然じゃないか……? Aさんは兄と弟を問い詰めます。