相続争いは、決して富裕層だけの話ではありません。資産が少ないからこそ、「わけ方」が問題となり、感情のもつれも大きくなりがちです。本記事では、母の相続をきっかけとした3人兄弟の葛藤から、相続トラブルへの備え方についてFPオフィスツクル代表・内田 英子氏が解説します。
あまりにも不自然…年金暮らしの90歳母が遺した「4冊の貯金通帳」〈残高計170万円〉に3兄弟真ん中っ子・63歳次男が覚えた「強烈な違和感」の真相【FPの助言】
トラブルを防ぐために…家庭でできる備え
相続財産の「行き先」を決めておく
相続財産がある場合、あらかじめ「行き先」を決めておきましょう。「行き先」を決める際には、法的拘束力がある方法で行うことが重要です。「行き先」が法的に認められる相続財産なら、遺産分割の対象になりません。たとえば、生前に作成可能な公正証書遺言であれば、法的な有効性が高く、改ざんのリスクもありません。遺産の多寡にかかわらず、利用することができます。
また、住む人のいない不動産など、行き先を決めるのが難しいケースについては、あらかじめ信頼できる専門家に相談しておきましょう。もしトラブルの種になりそうなことがあれば、できる限り早めに対策をとり、万が一の際にスムーズに現金化をすすめられるようにしておくと親切です。
相続人を“犯人”にしない環境づくり
使いこみがおこりづらい環境づくりへの配慮も大切です。
たとえば、預貯金の預入先を分散したり、通帳やキャッシュカードの保管方法を工夫したり、一部を信頼できる預け先に託したりといった対策が考えられます。
また、相続人となることが見込まれる方の経済状況や性格にも配慮が必要です。お金のことは話しづらいと感じる人は多いです。もし経済的な悩みを抱えていたとしても、お金について踏み込んだ話をしなければ、なかなか気づくことができないケースもあるでしょう。
金銭トラブルの種は、大きくなる前に対応することが重要です。日ごろからコミュニケーションをとりながら、ファイナンシャルプランナーをはじめ、生活設計や資金管理・家計管理に詳しい専門家に相談しながら進めることも検討しましょう。
“うちは大丈夫”と思っている家庭こそ要注意
相続財産がそれほど多くないからこそ、「公平性」に対する不満は根深くなります。一度もめごとがおこれば、兄弟姉妹の関係に長く禍根を残すことにもなりかねません。
相続の準備は、「お金の問題」であると同時に、「家族のいい関係」を守るためのものでもあります。ぜひ、できることから、始めてみてください。
内田 英子
FPオフィスツクル代表