親の援助で夢のマイホーム購入を実現できるのは、家計にとっては非常にありがたいことです。しかし、「親と同居」という条件付きの場合、生活面・金銭面のさまざまなメリットと同時に、見過ごせないデメリットも潜んでいます。ルールや距離感を曖昧にしたまま進めてしまうと、かえってトラブルの火種になることも。今回は、そんな「ありがたさの裏側」に潜む現実を、ある40代夫婦の事例をもとに、CFP®の伊藤寛子氏が解説します。

(※写真はイメージです/PIXTA)
おとなしく賃貸にしておけばよかった…世帯年収700万円・貯蓄300万円の40代夫婦、70代親からの「ありがたい援助」で新築マイホーム購入を実現。歓喜に沸くも、わずか1年で「もう限界」…家庭崩壊危機へ【CFPの助言】
最初はよかったが価値観の違いが積み重なり、ついに……
最初はうまくいくかに思えた同居生活でしたが、次第に両親から子育てや家事に対する口出しや要望が増えていったのです。
「そんな行儀じゃダメよ」
「食事はみんなで揃って食べなきゃ」
義母からの言葉に、妻の精神的な負担が増していきました。
大川さん夫婦が「こうしたい」と思っても、両親は価値観の違いからスタイルを変えようとしません。気を遣う日々に、我慢とストレスが積み重なっていきました。
妻は夫に「このままでは一緒に暮らしていけない」と訴えましたが、「費用を半分出してくれたんだから、両親の考えも大事にしないと」。夫の口から両親を擁護するまさかのひと言に、妻のストレスは限界に達し、ついに子どもたちを連れて実家に帰ることに……。
見落としがちな同居のデメリット
親との同居にはメリットもある反面、見落としがちなデメリットもあります。生活リズムの違い、食事やテレビの好み、物音への許容度など、些細な違いが日常的なストレスの積み重ねになります。家事や育児への善意のアドバイスも、度重なるとプレッシャーとなり、負担になってしまいます。
また、家族だけの時間や夫婦の空間など、プライバシーが確保しづらく、さらに関係に悪影響が出ることもあります。同居がうまくいかなかったからといって解消しようと思っても、二世帯住宅は流動性が低いため売却が難しく、将来的な選択肢が狭まるリスクもあります。
大川さん夫婦も、住宅ローンを抱えたうえで引っ越す、という選択は現実的ではありません。「こんなことなら賃貸にしておけばよかった」と嘆きながらも、結局なんとかお互いの妥協点を見つけ、適度な距離感を保ったうえで暮らしていくしかありませんでした。