「もし介護が必要になったら、自宅で過ごしたい」――そう願う人は少なくありません。しかし、その思いと現実の間には、大きなギャップがあることをご存じでしょうか? 本記事では、山口一夫氏の著書『シニアライフの人生設計』(ごきげんビジネス出版)より、著者の実体験とともに介護施設の実情を解説していきます。※記事内の体験談や数値(施設待機者数など)は、著者自身の2011年頃の体験に基づくものであり、現在の制度や各施設の状況とは異なる場合があります。
待機者が多い特養に入れたワケ
介護認定について、父の場合は熱中症で一時的に弱っていたこともあり、病院で再認定を受けた結果、要介護5の認定を受けることができました。介護老人福祉施設への申請については、民間の施設と特養のなかから27施設を選び出し、今後検討を進めやすいように一覧表を作成。
一覧には、
1.施設名
2.地域
3.住所/電話番号
4.施設の定員
5.担当者名
6.現在の待ち人数
7.申請年月日
8.現在の父の待ち順位、
9.施設情報(開所年度、施設の雰囲気、現入所者たちの状況、従業員の教育レベル)
などを書き込めるようにしました。
私たちの第一希望は、父が住んでいた市内にあるA特別養護老人ホーム(以下、特養A)でした。2011年の11月3日に入所申請書を提出したところ、11月末時点の待機者が426人いるとのことでした。私たち家族にとって特養Aは、立地、施設、従業員のレベル(質)、費用、などすべての面で第一志望でしたが、待機者が多いため入所はあきらめていました。ところが、12月に入ると特養Aから「至急、父や私たち家族と面談したい」と連絡が入ります。その時点の待ち順位は426人中28番目といわれました。
ここで覚えていただきたいことは、待機順位は単純な申請順位ではなく、提出した申請書を施設側が審査したあとに決まることです。何やら待機順位を決める計算式があるようで、介護候補者の年齢、介護度(要介護1〜5)、病気の有無、現住所(施設と同市か否か)、などから加点・減点されて最終的に決まるようです。
後日、父と私たちは30分ほどの面接を無事に終え、幸運にも第一希望の特養Aから入居承諾の連絡を受けました。結局、私はそれから父を約7年間支援して91歳で見送りました。
この経験から皆さまにお伝えしたいことは、要支援者や要介護者を一生懸命に支援することも大切ですが、決して無理はしないことです。つまり、難しいことはプロにまかせるくらいの割り切りも大切です。そのほうが、介護を受ける側も、支援する側も、心にゆとりができて長続きするものだと経験から考えるようになりました。
最後に、施設の選択に際しては、できるだけ足を使って施設の環境やサービスの実態を確認することが大切です。施設のハード面の良し悪しだけでなく、サービスや従業員教育の質なども確認しましょう。とくに開設3年未満の場合、施設は新しくて綺麗ですが、従業員の人数が十分でないことや、教育が行き届いていないこともあるため注意が必要です。
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/zenbun/pdf/1s2s_03.pdf
2024年9月アクセス
山口 一夫
ライフデザイン講師