退職金2,000万円も“空白の5年間”に不安を抱える清水さん

――2021年1月。清水健司さん(60歳・仮名)は、長年勤めた中堅コーヒーメーカーを定年退職しました。子どもはすでに独立し、妻と2人で暮らしています。

退職金として振り込まれたのは2,000万円。長年の勤労の成果に達成感を覚える一方で、65歳から始まる年金受給までの“空白の5年間”をどう乗り切るか、不安は拭いきれません。

そこで清水さんは、近所のスーパーでパート勤務を開始。月収は約8万円です。これで生活費をまかなう予定も、現役時代の夫婦の生活費は月20万円前後あり、毎月10万円程度の赤字が続く見込みでした。

「節約すればなんとかなるかもしれない。でも、5年も続けられるだろうか」

清水さんは、将来への漠然とした不安を抱えていました。

友人が得意げに話す「年利10%」の資産運用に興味津々

退職後まもなく、清水さんは古くからの友人4人と久しぶりに集まることに。居酒屋でささやかな退職祝いの席を設けました。みな60歳前後で、学生時代からの仲間です。

乾杯のあと、近況報告をひととおり終えると、話題は自然と老後のお金の話に移っていきました。

「年金もらえるまでの5年、どうやって暮らすかって悩ましいよな」

「俺は株をちょこちょこやってるけど、最近は調子悪くてさ」

「こっちは不動産で副収入を得てるけど、管理が面倒でね」

そんななか、1人の友人が話に割って入りました。

「いま熱いのはFX。特にトルコリラだよ」

「トルコリラ?」

皆の目線が、その友人のもとに注がれます。

「そう。トルコリラはいまかなり下がってて、いわゆる底値なんだ。で、政策金利がめちゃくちゃ高いから、FXで持ってるだけで毎日スワップポイントっていう利息がもらえるんだよ」

「利息って、どのくらい?」

だいたい年利で10%くらい。たとえば、健司の退職金2,000万円全部トルコリラに替えて運用すれば、年間200万円くらいになる計算だよ。つまり、年金がわりになるって話な」

冗談交じりの口ぶりではありましたが、数字のインパクトは十分でした。月に換算すれば、およそ17万円。パート代よりもはるかに多い金額です。

「年金みたいに、働かずにお金が入ってくるのか……」

「もちろん為替変動のリスクはあるけど、いまが底ならあとは上がるだけだから。いま仕込んでおけば、スワップと値上がり益の両方を狙えるよ」