定年退職から年金受給開始までの数年間は、どう過ごすかによってその後数十年の老後生活を大きく左右します。トルコリラに投資して大失敗した男性が「それでも持ち続ける」と決意した理由とは……。元会社員・清水さん(仮名・60歳)の事例をみていきましょう。神戸・辻本FP合同会社代表の辻本剛士CFPが解説します。※プライバシー配慮のため登場人物の情報は一部変更しています。
(※写真はイメージです/PIXTA)
夢なら覚めてくれ…退職金2,000万円を〈トルコリラ〉に託した60歳元サラリーマン、半年後に1,000万円を失い絶望→それでも「持ち続ける」と決めたワケ【FPの助言】
FPからの助言を受けた清水さんの「結論」
大きく目減りした資産を前に「専門家に相談しよう」と考えた清水さんは、地域の金融相談会で紹介されたファイナンシャルプランナー(FP)に相談。状況を聞いたFPは、慎重に言葉を選びながら次のように言いました。
「選択肢は2つです。1つは、いまのうちに損切りをして残った約1,000万円を分散投資に回すこと。もう1つは、トルコリラを保有し続けて、スワップポイントを受け取りながら価格の回復を待つ方法です」
「保有し続ける方法があるのか」
清水さんが顔を上げると、FPはこう続けました。
「ただし、トルコリラは過去10年ずっと下落基調にあります。回復を期待して持ち続けるのは、さらなるリスクをともなうため正直おすすめできません」
一方、清水さんはなかなか決心がつきません。
「2,000万円が半分以下になる……ここで手放したら、すべてを失ったように感じてしまう……」
結局、清水さんはそのまま保有継続を選び、スワップポイントを受け取りながら回復を待つ道を選びました。
しかしトルコリラはその後も下落し、2025年には1リラ=3円台へ。
「いつか戻るはず……いつか……」
そう信じる清水さんですが、はたしてその期待が報われる日はやってくるのでしょうか。
辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表