定年退職から年金受給開始までの数年間は、どう過ごすかによってその後数十年の老後生活を大きく左右します。トルコリラに投資して大失敗した男性が「それでも持ち続ける」と決意した理由とは……。元会社員・清水さん(仮名・60歳)の事例をみていきましょう。神戸・辻本FP合同会社代表の辻本剛士CFPが解説します。※プライバシー配慮のため登場人物の情報は一部変更しています。
夢なら覚めてくれ…退職金2,000万円を〈トルコリラ〉に託した60歳元サラリーマン、半年後に1,000万円を失い絶望→それでも「持ち続ける」と決めたワケ【FPの助言】
これで老後は安泰だ…「トルコリラ」を一括購入へ
「トルコリラか……」
数日経っても、清水さんの頭には「年利10%」という言葉がこびりついて離れません。
「本当にそんなに増えるのか?」
半信半疑ながら、気になって仕方がない清水さんは「トルコリラ_FX_利息」と検索。
すると、上部に表示されたFX会社のサイトには「毎日利息が入る」「放っておくだけで増える」などと魅力的な言葉が並んでいます。また、金利通貨としてトルコリラのスワップポイントの高さが強調されていました。
口座開設も思ったより簡単そうで、免許証とマイナンバーを提出すればすぐに取引が可能とのこと。
「年間200万円も入れば、生活費はまかなえる。これなら安心だな」
そう考えた清水さんは、まず試しに100万円分のトルコリラを購入しました。
スワップポイントが毎日入金…パートを減らして「FX」にのめり込む
数日後に口座を確認したところ、スワップポイントの入金を確認。
「本当にお金が入るんだ……」
日々増えていく利息を見ながら、「これならいける」と手応えを感じます。そして清水さんは、ついに決断しました。
「ええい、残りも全部入れてしまおう」
退職金の残り1,900万円分を一括でトルコリラに投資したのです。
これで老後は安泰。貯金を削る必要も、パートを続ける必要もない――。清水さんは、そう信じていました。
清水さんがトルコリラに全額を投じたのは、2021年の1月下旬のこと。購入当時は、1リラあたり13円前後で、高いスワップポイントに加えて「底値」といわれるその価格にも安心感がありました。
投資から間もない3月には、1リラ15円付近まで上昇する局面も。為替差益だけでも数百万円の含み益に加え、毎日スワップポイントが入ってきます。
「これはもしかすると、外車を買えるかもしれないな」
清水さんはすっかりFXにのめり込み、パートも週に2回へとシフトを減らしていました。