広がる所得格差が深刻な影を落とす現代。低収入にあえぐ人々は、現状を打破しようと懸命にもがきますが、その道のりは険しいといわざるを得ません。なかでも、就職氷河期にあたる40代、50代となった現在も非正規雇用にとどまる人々にとって、その閉塞感は一層深いものです。本記事では、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が氷河期世代の実情を紐解いていきます。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
年金なんて端っから期待してません…48歳手取り月14万円「当然、老後破産です。」“新卒50社不採用”で非正規雇用を続ける氷河期世代の吐捨て【FPが解説】
氷河期世代はなぜ迷宮から抜け出せないのか
48歳のAさんは手取り月14万円。ずっと非正規雇用として働いてきました。物価は上昇し続けているのに、賃金は20年前と変わらず、氷河期時代から出口なき迷宮を彷徨い、「もう手遅れ」と絶望しています。
Aさんが学生のころ、就職活動しているころは、景気が冷え込んでいたため、そもそも会社訪問しても採用枠が極端に少ない、もしくは採用しない企業が多数。Aさんは50社ぐらい会社訪問しましたが、正社員で採用に至った会社はありませんでした。
厳しい状況はわかっていたものの、30社ほど会社訪問するころには、「またダメかもしれない」と笑顔がなくなりました。それでも最後まで望みをもっていましたが、大学卒業の3月になると「諦めるしかない」と涙をのんだとのこと。正社員での就職は落胆的な状況だったそうです。
正社員は諦め、とりあえず働く場所をと非正規雇用で働きはじめました。ただ仕事の内容は、Aさんが希望していたデザインとはかけ離れた製造業でした。契約満了が近づくと、次の契約更新があるのだろうかと不安が募ります。さらに時給は最低賃金だったのです。
「心が折れてしまいました」
Aさんは仕事に対する夢と希望もなくなり、大きな挫折感だけが残ってしまったようです。たとえるなら、長い暗闇のトンネルにはいり、出口が見つからない状態です。迷宮に入り込んだ就職氷河期世代は、正社員で働くためのスキルや経験がないまま年を重ね、景気が回復し売り手市場になっても、年齢相応の経験やスキルがなく競争に負けてしまうのです。
さらに、老後はより一層深刻です。非正規社員として働く期間が長くなると、一般的に生涯年収は低くなる傾向にあります。これは、将来受け取れる公的年金額が現役時代の収入や保険料納付額に連動する仕組みであるため、老後の生活資金が不足するリスクを高める要因となります。
「当然、老後破産ですよ。年金なんて端っから期待してません。未来になんの希望もありません」