2024年、社会減に転じた道府県は40に拡大し、その大半が未婚の20代女性を失いつつあるのが現状です。地方創生を掲げながらも若年女性を引き留められない現状をどう変えるべきなのでしょうか。本稿では、ニッセイ基礎研究所の天野馨南子氏が、自治体と企業が取り組むべき女性社会減対策について詳しく分析、解説します。
「都道府県人口減の未来図」――2024年都道府県20代人口流出率ランキング (写真はイメージです/PIXTA)

女性の雇用問題は「人口問題」である

図表2からは、政令指定都市を持つような大都市圏であっても、20代男女の就職期流出の波に飲み込まれている、という実態が浮かび上がっている。

 

2019年から社会減を続けている3大都市圏中京圏の中核エリアとなる愛知県や、九州全域や山口県から若者を集めて「若者のメッカ」という一般イメージが固定化している福岡県でさえも、20代男女の人口動態でみるならば、社会減エリアとなっている。

 

20代人口男女合計の社会減よりもより深刻な、20代女性社会減から逃れられているのは、わずか5都府県である。女性活躍推進法行動計画提出企業の2割以上を占め、女性活躍推進において国の認定の「えるぼし」を取得する企業全体の5割※3を占める東京都が傑出して20代女性に選ばれており(4.7%増)、大阪府(1.8%)、神奈川県(1.7%)、埼玉県(0.9%)、千葉県(0.8%)が続く。

 

「雨だれ石を穿つ」どころではない出生機会損失を地元からの主に就職期の20代前半女性流出によって生み出しているにも関わらず、地方創生(≒地方少子化対策)ではいまだに、「観光※4」「男性ばかりを主に集める工場建設」「少子化で子どもの奪い合いレッドオーシャン状態にある学校建設」「未婚化で激減する母子の奪い合いレッドオーシャン状態をうむ子育て支援合戦」「日本の若者でさえ逃げ出す状況を棚上げした移民誘致」と、まるで戦後まもない時代に思いついたかのような非エビデンス人口戦略ばかりが押し出されている。

 

令和は情動議論の時代からEBPM(エビデンスに基づく政策策定)の時代へと変わらねばならない。

 

エリアの人口戦略の在り方を選択するのは、あくまでもその自治体と自治体で活動する経営者ではあるが、地元の未来を願うのであれば、「消滅可能性『地元』の未来を切り開くための覚悟」を持って、雇用問題に向き合ってほしい。

 

※3 厚生労働省ホームページ「女性活躍推進法に係る一般事業主行動計画策定届出状況」24年9月末状況;
※4 観光はエンターテーメントである。エンターテーメントはそれに費やす経済力があって初めてお金が落ちる業種である。堅固な労働市場が地元にあって初めて、その下流に発生・持続可能な事業であることを忘れないようにしたい。