遺言書のほかに有効な3つの生前対策

生命保険

生命保険の死亡保険金は受取人固有の財産ですから、遺産分割協議の対象とはなりません。

そのため、保険会社に確認が必要ですが、義母が生命保険を契約して自身で保険料を支払い、死亡保険金の受取人をAさんに設定すれば、Aさんが死亡保険金を受け取ることができます。ただしAさんは法定相続人ではないため、この場合も相続税額の2割加算の対象となります。

養子にする

義母がAさんを養子にすれば、養子は実子と同じく第1順位の法定相続人になるため遺産相続が可能です。また、この場合の法定相続分は実子と変わらないため、法定相続分はAさんとBさん、Cさんで3分の1ずつとなります。

Aさんに生前贈与を行う

義母からAさんへ生前贈与することで財産を贈ることができます。ただし、贈与額によって所定の贈与税が課税されます。

金融資産はAちゃんに…義母は「遺言書」を作成することに

筆者の話を聞いたBさんはこの内容を母親に伝えたところ、早速下書きを作成しました。

Bには自宅の土地建物を、Cには遺留分だけを、残りの金融資産などはAに遺贈する

そしてある日の夕食後、Aさんにそれを見せました。

Aさん「まあ……。お義母さん、本当にいいの?」

義母「ええ。たくさんお世話になった分、あなたには私の遺産を受け取ってほしいと思ってるの」

遺言書の存在を知ったCさんの「その後」

Aさんが台所に戻ったあと、Bさんは弟に、亡き母の遺言書の存在を明かしました。するとCさんは下を向いたまま黙っています。

Bさん「謝ったほうがいいんじゃないか? Aに」

Cさん「……」

しばらくして、Cさんはすごすごとリビングに向かうと、Aさんに声をかけました。

Cさん「あの、さっきの話……」

Aさん「いいのいいの、気にしないで。お義母さんには『そんなのいらないから』って言ったんだけどね」

Aさんは“余裕のほほえみ”で、こう返したのでした。

事前対策が円満相続のカギ

今回説明したように「長男の嫁」にもいくつか遺産を受け取る方法が存在します。これを受けて、義理の親に対して特別寄与料を請求したり、自ら遺贈などを要求したりしようと考える人もいるかもしれません。

ただし、特別寄与料を請求したくても、当事者が周りの親族などに気をつかって請求しにくい場合もあるでしょう。その際は、身近な人が請求できるように手助けをしたり、ときには専門家に相談しながら進めていくことが大切です。

牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員