令和5年司法統計によると、家庭裁判所が取り扱った遺産相続(分割)事件数は13,872件と、日本では相続に関するトラブルが後を絶ちません。特に、義父母の介護を担うことが多い“長男の嫁”は、法律上不利な立場にあるようで……。牧野寿和CFPが具体的な事例をもとに解説します。
義姉さんは部外者なんだから…年収2,000万円・49歳 “海外帰りのエリート”次男、87歳母の葬儀で「兄の嫁」に最低のひと言→当の兄嫁が“余裕のほほえみ”で返したまさかの理由【CFPが解説】
義弟の非礼な態度にも“どこ吹く風”な長男の嫁
――ごめん、いま入ってこないでくれる? 義姉さんは部外者なんだから。
87歳でこの世を去った義母の葬儀を終えたAさん(53歳)と夫のBさん(55歳)。葬儀のため夫の弟である49歳のCさんも実家に来ていました。
弟のCさんは総合商社に勤めており現在海外に赴任中。年収は2,000万円を超えるエリートです。しかし、高いプライドと周りを見下すような態度から友人が少なく、今回もすぐに赴任先に戻るといいます。
ひと息ついたあと、居室でBさんとCさんの話し声が聞こえたAさんは、お茶を淹れて階段をのぼり、居室のドアをノックしました。
すると、冒頭のようにCさんは、Aさんを冷たく突き放します。
Cさん「ごめん、いま入ってこないでくれる? 義姉さんは部外者なんだから」
Bさん「おい、そんな言い方ないだろ!」
呆れたBさんは、ドアを開けて言いました。
Bさん「Cは仕事が忙しいみたいで、すぐに向こうへ戻るそうだ。葬式も終わったばかりでまだ早いと思ったんだけど、母さんの遺産分割の話をしたいらしくてな……。C、母さんを最期まで面倒見たのはAなんだぞ。失礼にもほどがある」
Cさん「……でも、遺産分割に義姉さんは関係ないだろ」
Aさん「いいのいいの! じゃあわたし、まだ台所の片づけが残ってるから行くわ」
するとAさんは、なにごともなかったように台所へ戻っていきました。
“影の大黒柱”だったAさん
Bさんが生まれ育った地域では「長男が家を継ぐ」という風習が残っていたことから、Aさんは結婚した当初からBさんの両親と同居していました。ただその際に義両親と話し合い、実家を増築して2世帯住宅にしたそうです。
もっとも、AさんとBさんは共働きであったため夫婦の子どもは幼いころから祖父母の居間に入り浸るように。いつのまにか、食事も義両親・Aさん夫婦・子どもの3世代でいっしょにとるようになっていたそうです。
こうして仲睦まじく暮らしていたB家でしたが、7年前、義父が「体調が悪い」と病院で検査をしたところ、がんであることが判明。手術後、無事に退院して一度は自宅に戻ったものの、体調が思った以上に回復せず、やがて寝たきりの状態に。義母とAさんの献身的な看病の末、4年前に亡くなりました。
その後、義父の看病疲れからか、今度は義母が腰痛に。介護はときどき夫のBさんや子どもが手伝ってくれたものの、平日は主にAさん1人で担ってきました。通院への付き添いや介護施設への送り迎え、買い物……。Aさんは義母から「Aちゃん、Aちゃん」と頼りにされ、B家の“影の大黒柱”になっていたのでした。