義母が生前行っていた「秘密裏の相談」

実は、義母は晩年、長男のBさんに「Aちゃんに財産を遺せないか」と相談していました。義母いわく「Cはずいぶん稼いでいるみたいだから、お金の心配はないだろう」とのこと。

そこでBさんは、知り合いのファイナンシャルプランナー(FP)である筆者のもとを訪ねました。

「長男の嫁」Aさんに財産を遺す方法

話を聞いた筆者は次のように説明しました。

「特別寄与料」の請求

まず、Bさんの母が亡くなったあとにAさん自身ができる対策として「特別寄与料の請求」があります。

母の相続人は、BさんとCさんの兄弟2人です。ただし、相続人ではないAさんは「特別寄与者」として相続人に特別寄与料を請求することができます。

「特別寄与料制度」とは、民法改正により2019年から導入された制度です(民法1050条)。被相続人(義母)に対し、相続人以外の親族(Aさん)が無償で療養看護その他の労務を提供し、被相続人の財産の維持または増加に貢献した場合、その“特別の寄与”に応じた金額の支払いを、相続人(Bさん、Cさん)に請求することができます。

このとき、相続人以外の親族(Aさん)のことを特別寄与者といいます。なお、請求期限は相続の開始または相続人を知った日から6ヵ月以内、もしくは相続開始から1年以内です。

※ ここでいう親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族を示す。

この特別寄与料は被相続人からの「遺贈」とみなされ、被相続人の相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円+相続人の人数×600万円)を超えた場合は相続税の課税対象となります。このとき、特別寄与者には相続税の2割が加算されます。申告期限は、特別寄与料の金額が確定したことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。

また、義母が生前にできる対策として次の方法があります。

遺言書の作成

遺言書は法定相続分よりも優先されます。母が公正証書遺言を作成してAさんに特定の財産を遺贈すると明言すれば、法定相続人ではないAさんに遺産を渡すことが可能です。

※ 遺贈……遺言で財産を相続人以外に贈ること。

ただし「遺留分」には注意が必要です。

遺留分とは、法定相続人(被相続人の兄弟姉妹を除く)が最低限保証されている遺産の取り分のことをいいます。たとえばB家の場合、BさんとCさんの法定相続分は遺産の2分の1ずつですが、さらにその2分の1、つまり1人あたり4分の1が遺留分となります。

なお、Aさんが義母の遺産を相続した場合、相続税額が2割加算の対象となります。