よくここまでたどり着いた…今後の目標は「現状維持」

――今後の目標とか生き方、何か思うことがあればお願いします。

望月:ここまではそれなりに平穏な状態を維持してきた。もう大きな変化は望まない。周りの状況が変わることはあるだろうけど自分は今のままでいいよ。

菅原:我々の年齢で失敗したらドツボにドボンですからね。挽回する元気も気力も時間もない。まずは守りを固める、安全第一だと思う。

安田:お金の失敗は絶対に嫌。だから借金はしない、人に貸すこともしない、保証人になんてならない、ローンで買い物をしない、無条件に人を信用しない、賭け事はやらない。ケチくさいと馬鹿にされても意に介さない。これでいいと思っています。

田淵:賢明だと思いますよ。お金は大事、すべての幸福は安定した経済的基盤の上に成り立っているわけだから。

早瀬:確かに高齢者になって貧しいというのは惨めですものね。金銭的な貧しさは精神とか考え方の貧しさにも繋がるよ。

望月:家族との関係も良好な状態を保っていたい。友人は大切だけど家族、身内とは違う。何かあったときに頼れるのは妻や子たち、あるいは自分の兄弟姉妹だから。

菅原:わたしは熟年離婚なんて嫌だから妻を怒らせないようにしています。

早瀬:週刊誌とかテレビのワイドショーなどで亭主が定年退職したら離婚を言い出す奥さんが多いという特集をやるでしょ。あれって本当なんですかね、何でそんなことになるんだろう?

田淵:まあ、いろいろなものが積み重なって限界点を越えちゃうんでしょうね。女房の表情とか言葉遣い、話すことなどを観察しておけばいいのに。男は馬鹿っていうことだよ。

望月:熟年離婚とか定年離婚した人たちのその後ってどうなの? 幸せなのかね。

菅原:人それぞれだと思う。最初はクヨクヨしていても時間が経つに連れて何事もなかったように暮らしているんじゃないのかな、後悔とか反省したところで元に戻るわけじゃないのだから。

安田:女性は大変な人が多いみたいですね。わたしの知り合いにも子どもが社会人になったのを契機に協議離婚した人がいるのですが経済的に苦労しているみたいだった。本人は用意周到に準備していたつもりでも思うように仕事が得られないとか、交際の範囲が狭くなって孤立してしまうとか。わたしも夫に旦那さんをポイ捨てするような人と交際してほしくないと言われ疎遠になってしまったし。

田淵:親しい間柄、昔からの友人といってもまず自分の生活が第一。50歳過ぎて面倒なことに関わりたくないもの、相談に乗ってくれと言われても困るよ。これが本音だと思います。

菅原:仕事、会社に関して言えばもうワンランク出世したいというのが本音です。我慢に我慢を重ねてきたのだから最後の4、5年はふんぞり返って過ごしたい。

早瀬:定年を迎えたときの社内資格で退職金の額が少し違ってくるし、子会社や孫会社に転じて再雇用してもらえても副部長だったのか部長だったのかで処遇が違いますしね。

望月:わたしは仕事を辞めたあとも続けられる趣味を持ちたいな。ゴルフはやっているけど付き合いのためだけなんです、やっていて楽しいなんて思ったことないんだ。

安田:スポーツ系はやめた方がいいわよ。初心者ほどケガをしやすいそうですから。中年になったら身体に負荷を掛けないようにしないと。

望月:ですよね。仏像彫りでもやってみるかな。何か悟りが開けたりして。

菅原:この年齢になって改めて思うのは、よくここまで辿り着いたなということ。就職氷河期世代だけど希望に近い会社に入れたし、リストラの網にも引っ掛からなかった。会社が倒れて路頭に迷うこともなかった。ここまでは上出来だと思うんです。

田淵:この先はどうなるんでしょうね。明るい未来があればいいのだけど。

安田:物価は上がる一方だし不動産も上がり続けているでしょ。夫と家を買い換えようか話し合ったことがあるけど、今のマンションを売っても23区では無理みたいだった。夫の収入も頭打ちだから贅沢はできません。

早瀬:将来の年金だってどうなるか分からないですしね。

望月:50代に入ったら60代の準備をしなくちゃいけない。60代になったら70代のことを考えておかなきゃならない。気が休まるときがありませんよ。

菅原:ちょっとは良いことがあると期待しましょうよ。

一同柔和な表情で頷く。

増田 明利
ルポライター