就職氷河期を経験した中年はいま定年退職を控え、定年後の生活について考えています。選択肢のひとつである再雇用ですが、現場では「あまり歓迎されない」という現実も。『今日、50歳になった 悩み多き13人の中年たち、人生について本音を語る』(彩図社)著者でルポライターの増田明利氏は、50歳~54歳の5人にインタビューを行いました。50代男女の“生の声”を聴いてみましょう。
もっと会社にいたかったな…年収450万円なら20年で9,000万円「都内にマイホームが買える金額」を“暗黙の了解”で手放した54歳・氷河期世代の後悔
学歴コンプレックス、ハラスメントで早期退職…50代男女が抱く“後悔”
――あのときこうしていればとか、これをやっておけばという後悔みたいなものはありますか?
望月:やっぱり受験かな。高校も大学も確実に受かることを優先してチャレンジすることをしなかった。大学は一浪しても良かったと思う。
早瀬:自分も大学進学に係わることですね。もっと上のランク大学に行っていたらと思うことが何度もあった。嫌な言い方だけど難関大学に一般入試で入ることが人生において最善の策だと思う。その後の人生で通用する学歴、人脈、自信が一気に手に入ると思う。
田淵:旧制七帝大、一橋大、神戸大、筑波大、東工大。私学だったら早稲田大、慶應大は社会的評価や扱い方が違いますよ。学生アルバイトで塾の先生や家庭教師をやる人が多いけど在籍している大学でバイト代が違うんだもの。
菅原:就職なんてもっと露骨ですよ。昔は指定校制度、今はターゲット校でどこの大学かで扱いが違う。上位大学の学生は2回目の面接から取締役や役員が対応する。社会に出ると学閥があると思うことがあるし、ランクの高い学校ほど身内意識、仲間意識が強い。
安田:わたしはもう少し会社にいたかったな。結婚後も働いていたのですが妊娠したら辞めるのが暗黙の了解みたいなものがありました。上の子ができて4か月までは頑張っていたのですが定期健診で年休を取ったら嫌味を言われるし、流産したって知らないよなんて言う男性陣もいて馬鹿らしくなって辞めたんですよ。
田淵:今じゃ悪質なマタハラで大問題ですね。
安田:社会復帰できたのは下の子が中学に入ってからでした。事務系派遣でしばらく働けたのですが年齢が45歳になったら派遣の口もなし。今はパートのおばさんです。
早瀬:金銭的な損失は大きいですね。年収450万円として20年だったら9,000万円、。都内でも戸建てが買える金額ですものね。
安田:年金のこともあるでしょ。辞めなくて続けられたていたらと考えちゃうわ。
菅原:わたしはお金の運用をすれば良かったと思う。基本的に預貯金で投資をしたことはない。テレ東のWBSという番組で、最近の株高で億り人続出とか配当収入が200万円あるとかを特集していたんですが、何か損をした気持ちになってしまった。
望月:なんだかんだ言ってもお金は大事ですからね。
安田:年齢が高くなる連れて出費は増えていく。お金があれば解決できることがあるし、お金に助けてもらえることもある。本当にお金は大事よね。
望月:家族への接し方は反省する点がある。家事も子育ても妻に丸投げだったから。
菅原:わたしも子どもたちに悪いことをしたかなと思うことがある。仕事、仕事であまり構ってやらなかったし、しつけなければと細かいことに口出しし過ぎたところがある。少し恨んでいるかもしれないな。
早瀬:高齢者になって家族に見放されたら辛いですよね。わたしも遅ればせながら家族に対する態度を改めようと思います。
増田 明利
ルポライター