おしどり夫婦の「その後」

後日Aさんは、日焼けした顔で釣竿を担いで筆者の事務所にみえました。

「あれから夫婦で話し合いまして……貯蓄を取り崩して2人で使うという案に関しては、理屈では理解できるんですが、どうも使うのが怖くって。そこで当面は月5,000円ずつ、夫婦別々に好きに使うことにしました」

「あれ? でも、その釣り竿はなんですか?」

筆者の質問にAさんは笑って答えます。

「いやあ、自宅の物置に釣竿があったのを思い出しましてね。天気のいい日は釣りに行くことにしたんです。そうは言っても、お金を使うのは餌代くらいのもの。釣り場も自転車で行けるところと決めて、釣った魚は夕飯のおかずにしています。もし貯蓄がのこってしまっても、娘に相続すればいいですし」

老後のお金の使い方は“現役中”に決める

まとまった貯蓄や退職金があっても、そのお金をなにに使うのか決めておかないと、衝動的に使ってしまったり、宝の持ち腐れになってしまったりと、あまりいい結果を生みません。

退職後の貯蓄は、家計収支と貯蓄残高の推移を退職前にシミュレーションして、夫婦でその使い方を決めておけば、より安心した老後を迎えることができるはずです。

牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員