定年時にまとまった貯蓄があり、退職金を十分にもらった世帯であっても、その「使い道」を決めておかないと“思わぬ事態”を招く場合があると、牧野FP事務所の牧野CFPはいいます。退職金1,200万円を受け取ったA夫婦の事例をもとに、「老後のお金の使い道」におけるポイントについてみていきましょう。
(※写真はイメージです/PIXTA)
贅沢は年に1度の温泉旅行だったが…年金月21万円・退職金1,200万円の67歳元サラリーマン「まさかの口座残高」に悲鳴。原因は“極楽”を知ってしまった妻の執着【CFPの助言】
おしどり夫婦の「その後」
後日Aさんは、日焼けした顔で釣竿を担いで筆者の事務所にみえました。
「あれから夫婦で話し合いまして……貯蓄を取り崩して2人で使うという案に関しては、理屈では理解できるんですが、どうも使うのが怖くって。そこで当面は月5,000円ずつ、夫婦別々に好きに使うことにしました」
「あれ? でも、その釣り竿はなんですか?」
筆者の質問にAさんは笑って答えます。
「いやあ、自宅の物置に釣竿があったのを思い出しましてね。天気のいい日は釣りに行くことにしたんです。そうは言っても、お金を使うのは餌代くらいのもの。釣り場も自転車で行けるところと決めて、釣った魚は夕飯のおかずにしています。もし貯蓄がのこってしまっても、娘に相続すればいいですし」
老後のお金の使い方は“現役中”に決める
まとまった貯蓄や退職金があっても、そのお金をなにに使うのか決めておかないと、衝動的に使ってしまったり、宝の持ち腐れになってしまったりと、あまりいい結果を生みません。
退職後の貯蓄は、家計収支と貯蓄残高の推移を退職前にシミュレーションして、夫婦でその使い方を決めておけば、より安心した老後を迎えることができるはずです。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員